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第86話

パタンッ! グラスとシャンパンクーラーは置いて、テーブルの上を綺麗に片付けワゴンを持ってホテルマンが出て行った。 シャンパを注ぎグラスを2つ持ち、ソファに座ってる芳村の元へ持って行く。 「芳村、ほら。まだ、少しは飲めるだろ?」 「ん……お腹いっぱいで……少しだけな。海堂は結構飲めるんだな?顔に、全然出てないじゃないか?」 「まあな。そう言う体質なんだろ?気持ち良くは、なるけど酔っ払うって事は無いかな」 「……今日だけだぞ。飲酒は20歳過ぎてからな」 全く、そう言う所は真面目なんだよなぁ~。 今時の高校生なら、飲んでる奴の方が多いっつーの。 「解った.解った」 話題を変えようと、窓際に行きカーテンを開いた。 大きな窓からは煌めく街の明かりが見え、まるで宝石のようにキラキラ…輝いてた。 すっげぇ~~良い景色! 「芳村、こっち来いよ」 「ん?何?」 ソファから立ち上がり、窓側に居る俺の元に歩いて来た。 窓に近づいて来ると、芳村の表情が変わってきた。 「すっご~~い! 綺麗だ! こんな景色見られるなんて~!」 「だろ?人なんて見えないけど、ビルや店の明かりやイルミネーションやらで、宝石箱みたいじゃねぇ~」 「本当だな。キラキラ…して、凄い綺麗だ‼︎」 感激してる芳村は窓からの夜景に釘付けだ。 目をキラキラして見てる芳村の方が可愛らく綺麗だ。 俺は芳村の背後から、そぉっと首に手を回し抱きしめた。 「……海堂」 「これくらいは良いだろ?こうやって、芳村とこの景色を見たかった。少しだけこのままで…」 首に回した俺の腕を摩り 「…良いよ。誰かとこの綺麗な景色を分かち合うのも…」 それから俺達は黙ってキラキラ輝く街並みを見下ろしてた。 静かに流れる時間。 ずっとこうして居たい。 「海堂……今日はありがと。凄く楽しかった……海堂が色々考えてくれたのが凄く解った」 俺はその言葉だけで嬉しかった。 抱きしめた腕に力が入り、ギュッと抱きしめ芳村の髪に頬を当て更に密着した。 「そう言ってくれたら俺も嬉しいよ。俺の方こそ…ありがと。芳村とこうやって過ごせる事が嬉しくってしかたない」 「海堂って、案外ロマンチックで紳士的なんだな」 「顔に似合わずって事か?そう言えば、俺デートとかしたの人生で初めてかも」 「えっ! それは幾ら何でも嘘だろ?」 海堂は強面だが、ワイルドで自由な風貌で割とモテるのは知ってる……だから、デートなんかこれまでに何度もしてるだろうと思った。 「いや、嘘じゃねぇ~。俺、自分から好きになったのって芳村が初めてだ。今までは、付き合う事もしてねぇ~し面倒だと思ってた。別に、付き合わなくても不自由した事なかったしな。だから、デートプランも色々考えた…芳村が好きそうな所や喜びそうな所や、そう言うの考えるのも楽しかった」 俺は正直に話した。 「……海堂」 「バカな一つ覚えみたいだけど…芳村の事が好きなんだ。年下とか男同士とか色々あるかも知れねぇ~けど、そんなの関係なく俺は芳村を1人の人間として好きなんだ。本気なんだ!」 「……ありがと。そこまで……私の事……」 だめだ! 流されてしまう! 海堂のこの情熱とこの雰囲気に……。 でも……今日だけは、素直になれそうな気も…。 突然、海堂が私の肩を掴み振り向かせ目を閉じ、顔を近づけてきた。 私は静かに目を閉じた。 唇が重なり、何度も軽めのキスをし唇を舌で舐められ口をほんの少し開けると、海堂は透かさず舌を捻じ込んできた。 軽めのキスから深いキスに変わり、舌を絡める音や唾液を吸う音がし激しいキスになった。 クチュクチュクチュ…チュパチュパチュパ…ジュルジュルジュル…クチュクチュクチュ…… 肩を掴んでた手が後頭部と腰に当てられ、覆い被さるように海堂は激しいキスをする。 まるで食べられてしまうんじゃないか?そのくらい激しいキスに海堂の情熱が解る。 堪らず、私も海堂の背中に手を回した。 海堂の背中がピクッと反応した。 抱き合うような体勢での激しいキスは暫く続いた。 俺から仕掛けたキスに芳村が初めて応えて、いや、受け入れてくれた。 嬉しくなり、ついつい気持ちも昂り前のめりになってしまった……と思ったら、それだけでも嬉しかったのに…俺の背中に芳村の手が回された。 今まで芳村からそんな行動はなかった……俺の思い過ごしか?と一瞬思ったが、しっかりと回された手の感触と温もりがあった。 ああ~~、俺の一途な想いにやっと応えてくれた。 まだ言葉では聞いてないが……この手が物語ってる。 俺は嬉しさのあまり夢中で芳村の唇を貪った。 窓からは都会ならではの人口的な光が差し込み、2人を包み込んでた。

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