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第87話
クチュクチュクチュ…チュッチュッチュ……
芳村の咥内を蹂躙(じゅうりん)し、やっと満足し唇を離した。
芳村の体から力が抜けガクっと落ちそうになり、俺は慌てて抱きしめた。
「大丈夫か?」
「はぁはぁ…こんなキス……はぁはぁはぁ」
「悪い……つい嬉しくなって、夢中になった」
「いつも…こんな激しいキスするのか?はぁはぁはぁ」
嫌味っぽいだろうか?
でも……気になる。
「俺……あの時から、芳村としかキスしてねぇ~よ。他の奴とはキスする気にならない! 変に思うかもしんねぇ~けど……他の奴に汚されるのが嫌だった。何だか解んねぇ~けど、芳村とのキスは神聖な感じがして……願掛けの意味もあったかも」
芳村が他の奴とのキスを嫉妬してるようで嬉しかった
今まで ‘困る’ と話すか.黙ってしまうだけだったから、こんな素直な芳村に俺も正直に素直な気持ちを話す事にした。
「そうなのか?そこまで……私の事を……」
海堂の話しから、やはり他の人と……そんな口振りだった……胸がチクッと痛んだ……けど、私への気持ちは充分伝わってきた。
あと一歩.あと一息だと思うが、芳村からの言葉は続かない。
やはり俺が強引に積極的にいくしかないか⁉︎
キスを受け入れて背中に手を回した事だけでも、一歩前進したと思おう……今は、それが精一杯なのかも知れない。
でも、俺の気持ちは話す‼︎
芳村の両肩に手を置き、俺は真っ直ぐに目を見つめ真剣な表情で話す。
「芳村、今までも言ってきたが、俺の本気の気持ちだ好きだ! 初めて会った時から好きになった! 一目惚れだ! 俺の者になれよ!」
「…………海堂」
「芳村、素直になれよ。俺に惚れてんだろ?本当は、気付いてる癖に気付かない振りしてんだろ?」
「それは………」
はっきり返事をしない芳村にイラつくが……ここは我慢だ!と言い聞かせ、根気強くいく事にした。
「俺を好きかどうかだけだろ?芳村はごちゃごちゃ考え過ぎなんだ! 自分に素直になれよ! 俺は欲しいものは絶対にものにする! 俺の芳村への気持ちは本気なんだ!」
芳村は等々俯いてしまった。
そんなに困らせてるのか?
俺の事好きな癖に……何も考えずに、素直に俺の胸に飛び込んできて欲しい……俺は受け止めみせる‼︎
俯く芳村の顔を上げさせ、唇を合わせた。
チュッ…クチュッ。
芳村の体を抱きしめ思いの丈を話す。
「好きだ! 好きだ! 好きだ! ………恋って、難しいな」
「…………」
黙って、俺の背中に手を回し抱き合った。
暫く俺達は抱き合ったままで居た。
このままずっと居たい!
そう思う反面、重苦しい雰囲気を何とかしたい、折角のクリスマスだ!とも思った。
俺の気持ちは言ったし、芳村には伝わってると信じたい!
もう、これ以上は……困ったような泣き出しそうな顔をさせたくない。
俺は体を離し芳村の額に額を合わせ、泣き出しそうな顔を見た。
「俺の気持ちは言った。そんな顔をさせたくはなかったが……言わずには、居られなかった。ごめん。クリスマスなんだから笑ってくれよ」
「……急には、笑えない」
「ほら、口角上げろよ」
合わせた額を離し、手で芳村の口元を上げた。
「……変な顔」
くっくっくっくっ……
「ひぃどおいよぉ~」
くっくっくっくっ……
「てぇ…はなひてぇ」
「悪い.悪い」
頬を手で撫で「全く…ろくでもない事して!」と文句を言うが、顔は笑ってた。
俺は近くのテーブルに置きっ放しだったグラスを持ち1つを芳村に渡した。
「機嫌直して。この景色見ながら、もう1度乾杯しようぜ」
「うん……乾杯!」
「乾杯!」
シャンパンを飲み、窓からは煌びやかな街を見下ろし俺はシャンパンを持つ手を変え、空いた手で芳村の手を握りキラキラ…輝く街を眺めた。
シャンパンを飲みながら暫く眺めてたが、グラスも空になり結構な時間になってた。
「芳村、そろそろ寝ようか?車の運転で疲れただろうし、さっき…うとうと…してただろ?」
「まあ……そうだったけど」
芳村からグラスを奪い近くのテーブルに置き、そのまま芳村と手を握り隣の寝室に向かった。
寝室のドアを開けるとキングサイズのベットが、ドカッと存在感を醸し出してた。
ピタッと足を止めた芳村に対して、俺は強気に話す。
「芳村が何を考えてるのか知らねぇ~けど……今日は芳村の気持ちを考えて何もしないから、安心しろ! 信じてくれって言うしかない……けど、抱きしめて寝るぐらいは良いよな?俺、夏休みに、芳村の部屋で芳村のベットで寝た時に、芳村を抱きしめて寝て朝を迎えたいってずっと思ってた。今日は叶えてくれるよな?」
芳村は少し考えてたようだが、何も言わずに頭を縦に振った。
「よっしゃ~~! めちゃくちゃ嬉しい!」
ベットカバーを引き剥がし、俺は寝そべり隣をぼんぼん叩いた。
芳村はゆっくりとベットに歩み寄り、ベットに上り少し離れて横になった。
「芳村! 俺、抱きしめて寝たいって言ったよな⁉︎もっとこっちに来いよ!」
「………お前が来れば良いだろ?」
そう言う事ね‼︎
良し、解った!
俺は腕枕し強引に密着し、芳村を胸に抱いた。
「これ、これだよ‼︎ やっと芳村を抱きしめて寝れる!」
「……そんなに嬉しいのか?」
「ああ、ずっとこうしたいって思ってたからな」
「そうか。海堂、今日はありがと……おやすみ」
「ん、おやすみ。ゆっくり寝ろよ」
丁度、俺の顔の前に頭があったから、芳村の髪にキスした。
俺が本当に何もしないと解り、少し緊張してた芳村から力が抜け、静かな寝息が聞こえた。
芳村が寝たのを確認して、俺は喜びと安心とで眠りに落ちた。
ずっと抱きしめて寝たいと思ってた芳村の体は温かく俺の腕の中にすっぽり入り抱き心地が良かった。
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