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第88話

海堂の広い胸に抱かれジッとして居ると、ドキドキ…してた海堂の心臓が規則正しくなり、そして海堂が寝息を立てた。 やっと寝たか。 私は寝た振りをしながら、海堂が眠るのを待ってた。 少し寝た所為もあるが、海堂の熱烈なモーションに……もう誤魔化す事や逃げる事ができないと観念し1人で考える時間が欲しかった。 あんなに情熱的に言われたら……いや、前々から言われてた。 でも、何とか誤魔化したりはっきりと返事をせずに切り抜けてきた。 そのうち海堂の気持ちが変わるかも知れないと……。 はぁ~~もう潮時…か。 海堂がさっき言ってた ‘俺を好きかどうかだろ?芳村はごちゃごちゃ考え過ぎだ’…と、確かに、何も考えずに海堂の気持ちに応えられたら……。 あっ‼︎ 海堂の気持ちに応える⁉︎ 好きと言っても憧れからだとか.この年頃の一過性のものだろうと色々自分の気持ちも誤魔化してきたが……海堂の情熱に素直になっても良いんじゃないか?いや素直になりたい! そして海堂の言葉を…信じたい‼︎ 今まで気持ちに蓋をし、言葉に出したら終わりだと思ってたけど…。 もう…だめだ! 私は…海堂を……好き……だ! もう認めるしかない‼︎ こんなに言われたら、もう自分の気持ちを誤魔化せない‼︎ 海堂に……好きだ!と言ってやりたい! どんなに喜ぶか⁉︎ 強面で眼光の鋭さが無くなり、悪戯っ子みたいなくしゃくしゃの顔で破顔するんだろうな。 その光景が目に浮かぶ! 私が言った一言で……好きだと言うだけで。 絆されたのかも知れないし……家庭の事や色々と噂があって気に掛けてた生徒ではあった……。 確かに、強引さや素行の悪い時もあるし周りとは一線引いてる所もあり自分個人を理解されない事に諦め冷めた所もあるが、担任として接してるうちに外見とは違う優しさや繊細さも解った。 何より、自分の懐に入れた人には心を許し情に厚い……成宮や桐生との接し方で解る……たぶん、私もその内の1人なんだろう。 そんな海堂を知って……それがいつしか気に掛けてた一生徒から……いつしか好きな気持ちに変わったのかも知れない。 海堂が他の生徒と一緒に……その光景を見てショックを受けたのもそうだろうし嫉妬もした。 海堂を意識する前なら、男子校のありがちな事.性欲旺盛な年頃だとある程度理解はしてたし見逃しても居た……でも、好きだと言われ意識してからは…‘なぜ?’ ‘好きだと言っておきながら…‘と、海堂の行動に不信感と嫉妬が渦巻いた。 それもあり海堂への気持ちを素直になれなかった……のかも。 今思うとそうだったとしか思えない。 色々考えてると小さな声で呼ばれた。 「…よし…むら」 ん、起きてるのか? 「すき…だ……」 寝言⁉︎ また寝息を立て、私をギュッと抱きしめた。 寝言を言う程…夢に出る程……好きなのか! 思わず笑みが溢れた。 海堂の言う通り、ごちゃごちゃ考えず素直に海堂を好きな事を話そう。 海堂に気持ちを話して……考えるのはその後にしよう 海堂の喜ぶ顔が見たい。 その時は、それだけを考えてた。 明日、楽しみにしてろよ。 海堂の寝顔を見上げ微笑んだ。 明日、海堂の喜ぶ顔を思い浮かべると、私の方が何だか楽しみだった。 そう思うと、やっと胸のつっかえがとれた気がした。 私も海堂の胸に顔を埋め、やっと眠りに就いた。

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