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第89話
人の温もりに包まれ朝を迎えた。
目が覚めると海堂が隣で私を抱きしめてた。
通りで、あったかいと思った。
抱きしめて寝る事はあっても、抱きしめられて朝を迎えるのは新鮮だった。
「これも…ありだな」
海堂はまだ眠りの世界に入ってた。
まだ起きないか?
昨夜、気持ちを伝えようと決め朝を迎えたが、どうやって話そうか?
急に、私から話すのも……。
海堂から何らかのリアクションがあれば、言いやすいんだが……。
海堂の広い胸に抱かれ考え事をしてると、目の前に男には役に立たない何の為にあるのか解らない乳首があった。
海堂でも乳首は感じるのか?
ふと、悪戯心が湧き起こり舌を出しチロリっと舐めてみた。
ピクっとする胸筋に……感じてる?
チロリ…ペロペロ…と何度か舐めてみた。
「ん……んん」
夢の狭間に居る海堂から声が洩れた。
楽しい…かも。
また舌を出し舐めようとした時に……海堂は目線を下げ私を見てた。
「…何してんの?」
「あっ! 起きたのか?」
「何だか胸の辺りがくすぐってーと思って。髪が触れてくすぐったかったのか?と思って見たら、俺の乳首舐めてる芳村が見えた」
「目の前にあったもんだから……海堂でも感じるのかなって思って実験してた」
誤魔化すように笑うと海堂も笑って
「へぇ~、芳村もお茶目な事するんだな?残念でした! 俺は乳首は感じねぇ~から、くすぐったいだけ~~」
「そうなんだ~」
反撃に合うと身構えてたが、海堂は私と顔が見える位まで体を下げ目線を合わせた。
目の前には起きたばかりのあどけない海堂の顔があり
「おはよ。芳村とこんな朝を迎えられて、めちゃくちゃ嬉しい♪」
朝から素直に自分の気持ちを話す海堂に、自分の気持ちに素直になろうと決めたはずの私は何だか照れてしまう。
「おはよう。海堂って、朝の目覚めは良い方なんだな寝起き悪いタイプなのかと思ったが」
「まあな。機嫌が悪いって事はねぇ~な。それに今日は特にな」
「特に?」
「当たり前じゃん。好きな奴が側に居て一緒に朝を迎えられて、こうして朝1番で芳村の顔を見て話せるんだからな」
「凄い、口説き文句だな」
俺が思ったままを正直に話すと芳村は照れた顔をしたそれがまた可愛いらしかった。
芳村って、学校ではしっかり者で誰にでも平等で善悪をはっきりと話す癖に、プライベートはお人好しで良く笑い仕草や言動での可愛さがあるんだよなぁ~、そのギャップが俺を魅了する。
どんどん好きになる。
もう俺の気持ちは抑えられない。
猪突猛進でバカの一つ覚えみたいに、俺の気持ちを話すしかない。
「それで口説かれてくれるなら、何度だって言うぜ。好きだってな」
また困らせるだけだと思っても言わずに居られない……特にこんな日には…。
「そうか……私も好きだ」
いつ言おうかと思ってたが、何となく流れで言えた……やっと言えた。
「えっ!……今…何て⁉︎」
聞き間違いか?
好きだって聞こえたぞ。
「恥ずかしいなぁ~。何度も言わせるなよ……私も…海堂の事が好きだって言ったんだ!」
豆鉄砲を食らったみたいな顔で、私を見てる海堂にもう1度言った。
「本当か⁉︎ 後で、嘘だとか冗談とか言うなよ! 本当に、俺の事好きなんだな⁉︎」
信じられず何度も確認してしまう。
あんなに良い返事はしなかった芳村が……俺の事を好きだって……まだ信じられね~。
夢見てる?俺…起きてるよな?
「嘘とか冗談で言える訳ないだろ?私も海堂が好きだ」
信じられないって顔から顔をくしゃっとし、破顔して私を抱きしめた。
その笑い方…好きだな。
「すんげぇ~嬉しい~! マジで嬉しい~! 本当に本当だよな?やっと正直に言ってくれたな」
ギュッと抱きしめ、この瞬間が嘘じゃないんだ!
芳村はこの腕の中に居て、その口で俺を好きだって言った!
芳村の気持ちが揺れ、俺が強引に迫ると少しずつだが俺を意識して気持ちも傾いてきてるとは思ってたが……教師と言う立場やら世間体やらで正直な気持ちは話さないんじゃないか?とずっと思ってた、それでも俺は好きだと言い続ける事しかできない。
いつか報われる.奇跡が起きると言い聞かせ、ここまできた。
「まあな。海堂が ‘ごちゃごちゃ考え過ぎだ、好きかどうかだけだ’って言うから……昨夜、考えたんだ……余計な事は考えずに今の気持ちを海堂に伝えようと……好きだってな」
「マジ⁉︎ 俺めちゃくちゃ嬉しい‼︎ 芳村の事好きで好きでどうにかなっちまう所だった。嬉しいよ‼︎」
更に体を密着させ抱きしめ、私の顔中に何度も何度も軽めのキスをして海堂の嬉しさを表してた。
「こら.こら」
まるで大型犬が嬉しさを飼主に表現してるような…いや大型犬は可愛いか⁉︎ 狼か?ん~、海堂は……ライオンだな。
自由であり王の風格で海堂にはぴったりだな。
誰にも懐かず怖がられてるライオンが嬉しさで顔中舐め回してる…そんな感じだ。
嬉しいが……。
たくさんのキスをし、やっと満足したらしい海堂は顔を離し「やっと俺の者になった‼︎ 好きだ」と言って、また抱きしめた。
私も海堂の背中に手を回し広い背中を撫でた。
「はあ~、やっとだ! やっと……」
俺はずっと待ち焦がれてたこの瞬間が嬉し過ぎて、芳村の体を抱きしめ足も絡め、俺の者だと体の全てを使い確認するように密着した。
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