92 / 141
第92話
今度こそシャワーを浴び、またバスローブを身につけソファで体を休めてた。
芳村は向いのソファにぐったりと寝そべり体力を回復してる。
「芳村……大丈夫か?」
流石に怒られるか?と思い、様子を窺いながら話す。
「……海堂って……マジでタフだな。お前は大丈夫?」
少し呆れてるようだが、怒っては居ないようだ。
「俺は全然余裕! まだまだイケるぜ‼︎」
芳村は一瞬目を見開き驚いた顔をしたが、俺がニヤニヤ笑ってるのを見て冗談だと解ったようだ。
「海堂に付き合ってたら、幾ら体力あっても保たないな」
「これくらいでバテたら、この先大変だぜ。まだ、ちゃんとセックスもしてねぇ~し、今度は俺の本気見せてやるからな。まだまだ、こんなもんじゃねぇ~から」
額に手を当て呆れた顔をし
「体力ばか⁉︎」
「誰が体力ばかだって?」
「海堂しか居ないだろ⁉︎」
「失礼だな! スタミナがあるって言ってくれよな」
「そうとも言うか」
クスクスクス…笑う芳村は可愛らしい。
さっきも可愛いかったしな。
お強請りしたり可愛い喘ぎ声だったり……考えたら、またヤバイ事になりそうだ……今度こそ怒られる……考えるのは止めよう。
そんな和やかな雰囲気の中で、内線の電話が鳴った。
ルームサービスを持ってくると言う電話だった。
2人でモーニングを食べながら、今日の予定を話す。
「なあ、芳村~。この後、昨日行けなかった鎌倉を観光しねぇ~?」
「そうだな。折角、鎌倉まで来たし…あまり遅くならなきゃ良いよ」
やった~!まだ一緒に居られる!
そう喜ぶ反面……遅くならなきゃ?明日、何か用事あんのか?まさか彼女か?俺を選んでくれたんじゃねぇ~の?……不安が過ぎる。
「明日…なんかあんのか?」
俺は不安でそう話すと、芳村は溜息を吐き呆れた顔をし話す。
「はあ~。あのね、お前達は冬休みかも知れないけど、私は学校があるんだ」
学校⁉︎
あっ! 自分が冬休みだから、すっかり失念してた。
それでも彼女と会うとかじゃなくホッとした。
「悪い! 忘れてた! 遅くならないように観光しようぜ。芳村、運転大丈夫か?」
「まあ、運転は大丈夫だよ。ここ出るまでゆっくり休めばな」
「……これ以上は何もしねぇ~よ。あ~~、俺が免許持ってたら、芳村も楽だったのになぁ~」
「持って無いんだから言っても仕方ないだろ」
「まあな。俺が免許取ったら、今度は俺の運転で遠くまでドライブして、温泉でも入って1泊でも良いから旅行に行かねぇ~か?」
「随分、先の話だな。まあ、首を長くして待ってるよ」
「約束な!」
「はい.はい」
「返事は1回だろ?」
「はい!……いつもと逆だな?」
クスクスクス……目が垂れ笑ってる芳村の笑顔。
朝を一緒に迎えられて、こうして朝食を食べ先の約束をして芳村の笑顔を見れて……あ~~、幸せ‼︎
こんな日がずっと続けば良い~な。
それから朝食を食べ終わり、ホテルマンが下がる際にクリーニングを持って来てくれた。
俺達はまだ2時間程チェックアウトまで時間があり、腹が膨らみソファで惰眠をとったり昨日回ろうとしてた鎌倉の話をしたりとゆっくり過ごした。
「芳村、出れる?」
「良いよ」
「じゃあ、出るか」
ホテルの部屋を出る前に、もう一度部屋を見回した。
「ん?どうした?」
「いや、芳村とクリスマス過ごせたんだなって思って」
俺は一人で思いに耽ってた。
「何言ってんだ?まだ鎌倉観光するんだろ?」
「そうだった……芳村…」
隣に居る芳村を抱き寄せ顎を持ち唇を合わせた。
クチュクチュクチュ…チュッチュ…
唇を離し、芳村の額に合わせ優しそうな目を見つめた。
「俺、今すんげぇ~幸せだ!」
「私も」
今までの芳村からの返事とは違い、俺と同じ事を思ってた事も嬉しかった。
その返事を聞いて、昨日芳村から ‘好きだ’ と言われた事が夢じゃないと思うと、またまた嬉しさが込み上げて俺は芳村を抱きしめた。
芳村も俺の背中に手を回し抱きし合った。
「海堂…いつまでもこうしてられないぞ。そろそろ本当にチェックアウトしないと」
「芳村~、すげぇ~良い雰囲気だっつーのに!……でも、出るか」
1つ文句を言って、芳村と今度こそ本当に部屋を出た。
芳村はクスクス…笑ってた。
下りて来たエレベーターには何人か人が居たが、こっそり手を繋いで居た。
ロビーに下りた時に繋いで居た手が離れ寂しくなる。
「芳村、待ってろ」
俺は芳村をロビーのソファで待たせフロントで精算し芳村の元に戻る。
「海堂、私も半分出すよ。学生のお前に支払って貰うのも……」
「芳村! 無理に誘ったのは俺だし……それに少しは格好つけさせろ!」
「でも……結局は、親御さんのお金だろ?悪いよ」
申し訳なく感じてるのか目線が下がってた。
そう言う事か……ったく、現実主義って言うか余計な事まで気が回るんだよなぁ~。
「親の金って言われたらそうかもしんねぇ~けど、俺が小遣いやお年玉貯めた金でもあるから気にするなって」
「でも……」
「芳村! 良い気分なんだからテンション下げる事言うなって。金の話はこれでお終い!…な⁉︎」
芳村の頭を数回撫で、目でお終いだと訴えた。
「……解った」
「良し! じゃあ、鎌倉巡りに行こう!」
俺は雰囲気を変えるように話すと芳村も悟って「そうだな」と笑顔を見せた。
車に乗るまで俺はまだ自分が学生で金の事でも芳村に心配される自分が情け無かった。
免許の事もそうだし金の事も……どうにもならない事だが、早く芳村と対等になりたい!と強く思った。
これまで芳村に惚れ、ひたすらに落とす事だけを考え、多少強引でも俺の気持ちを伝えてやっと昨日芳村も受け入れて応えてくれた、それだけを願い突っ走ってきたが……今度は、俺の中に焦りとジレンマが芽生え始めたようとしてた。
ともだちにシェアしよう!