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第93話
昨日出来なかった鎌倉巡りをし夕飯を食べ、俺を家まで送るつもりで運転してる芳村に俺はまたダメ元で我儘を言った。
「なあ?今日って、芳村の所に泊まっちゃダメか?」
「えっ! どうして?」
前を向いて運転してた芳村が突然言い出した俺の話に驚いてた。
「だってよぉ~、このまま芳村と分かれるのって何だか寂しいっつーか、折角、芳村と思いが通じたのに……家に帰ったら夢だったとか思っちまう。違うな、俺がもう少し一緒に居たいんだ」
このまま離れるのが嫌だった。
昨日、思いが通じたばかりで…離れたく無かった。
ここまで長かったから、その分芳村と少しでも長く一緒に居たいのと離れたら芳村の気持ちがまた変わるんじゃないか?と、少しの不安もあった。
「……別に、構わないけど」
意外にすんなり了承してくれた事に、逆に俺の方が驚きそして喜んだ。
「良いのか?やりぃ~♪」
「でも、明日から暫く学校に行くからな。今日泊まるのは構わないが、明日の朝には駅まで送るぞ。それで良いか?」
本当は、冬休みいっぱい芳村の部屋で過ごしたかったが……日中部屋に居ない芳村を待ってるのも暇だろうと考えてくれてるんだろう……そこまでは我儘は言えねぇ~か⁉︎
「それで良い‼︎」
「あと、もう1つ条件がある」
「何、何?」
俺は嬉しくってどんな条件でも飲むつもりだった、今日、芳村の部屋に泊まれる嬉しさが顔に出てたらしく芳村は運転してるのにも関わらずに俺をチラッと見て笑った。
「そんなに私の部屋に来るのが嬉しいのか?ま、良いけど。条件は変な事はしない事! 大人しく出来るか?私は明日は学校だからな」
変な事⁉︎
大人しく⁉︎
あ~、セックスはしないって事な。
ま、今日は仕方ねぇ~か、芳村は次の日は仕事だしな。
「解りました! 大人しくしてます!……その代わり……」
今度は俺の方から条件を出した。
「その代わり?何?」
「一緒に寝る事は許してくれよな。夏休みの時みたいにソファで寝るとか言うなよ」
「そんな事か?……解りました! 海堂君と一緒のベットで寝かせて下さい!」
俺の口真似をして笑かす。
くっくっくっ……
「添い寝してやる」
「それは、こっちの台詞!」
クスクスクス……ははは……
くっくっくっ…ははは…
帰りの車内は笑いに包まれ楽しかった。
この和やかな雰囲気なら……もっと我儘言っても良いか⁉︎
「なあ、芳村達って冬休みはいつ?」
「冬休み…か。一般的に、学校の先生だと夏休みや冬休みだとか長期休暇あって楽で良いと思われがちだが基本私達は平日は出勤し土日は休みなんだ。まあ、お盆やお正月は何日間か纏めて休みはあるが。長期休みには研修や研究.各レポートや年間計画作ったり提出物もあるしな。あとは寮や学校設備の点検やメンテナンスなども行われ立ち会う事もあるし、何より緊急に備えて居なければならない。結構やる事あるだろ?」
俺達学生がのほほんとぐーだら長期休暇過ごしてる間にそんなに仕事あるのか~。
結構、教師って大変なんだな。
密かにそう思ってた。
「大変なんだな。じゃあ、正月休みはいつ?」
「30~1/3までだけど?」
「予定あんのか?旅行とか?」
「いや、実家に帰省しようかと思ってる。年に1回位は顔を出さないとな」
「芳村の実家って?」
「京都だ…と言っても、外れの田舎の方だが」
「へぇ~、京都か」
出身が京都って言うのは、芳村のイメージに合ってた
まさに京美人?
和風美人だもんな。
「なあ、もう1つ我儘言っていいか?」
「何?怖いな~」
「31~2日まで芳村と一緒に過ごしたい!……一緒に年を越して一緒に新年を迎えたい!……ダメか?」
本当は30~1/3まで芳村の休み全部を一緒に過ごしたかったが、俺なりに譲歩した。
1人でゆっくり過ごす時間も必要かと思ったからだ。
「う~~ん………考えさせてくれ。急に言われてもな。一応、実家に帰るつもりだったからな」
「……考えて連絡くれよ。俺はそのつもりで待ってるからな。なあ……冬休み会えない時に電話しても良いか?」
「それは構わないけど?……海堂って……寂しがり屋?それとも構ってちゃん?顔に似合わず可愛い~所あるな」
クスクスクス……笑ってた。
「俺はいつでも芳村と一緒に居たいんだ! 会えない時には声位は聞きたい!……恥ずかしい事言わせんなよ……芳村の実家って誰がいんの?」
電話はして良いと了承を得て、今まで電話するのにも用事が無ければ掛けられなかった……もう用事を作ってまで電話しなくても自由に掛けられるんだ‼︎
今までの俺と芳村の関係が変わったんだ。
そう実感が湧いた。
でも……寂しがり屋は良いけど……構ってちゃんは恥ずかしかった……だから話題を変えた。
「実家には両親と兄夫婦が居る。姪っ子と甥っ子もな」
「そうなんだ……やっぱ会いたいよな?」
「まあ、会いたいって言えば会いたいが…親って言うより姪っ子や甥っ子が可愛い~からな。それに同級生と会うのも楽しみかな?」
そうだよな、年に1回か2回帰れるかどうかだろうから家族や同級生には会いたいだろうな。
俺の我儘で……でも、俺も気持ちが通じたばかりで少しでも一緒に居たいのが本音だ。
学校が始まったら、また生徒の1人なんだろうし……芳村はそう言う奴だ。
気持ち的にはダメだろうなと期待はしない事にした。
それから俺はごり押しはせずに話題を変え、車中は楽しく過ごし芳村は運転しながらも良く笑ってた。
そして俺はその日は芳村の言いつけ通り何もせずに大人しく芳村を抱きしめ眠った。
おやすみのキスが濃厚になったのは、ご愛嬌だ。
芳村と密着し寝るのは嬉しいが……下半身が反応しそうで困った。
腕の中の芳村は鎌倉巡りで歩き疲れと運転疲れで直ぐに安心したように、俺の胸に顔を埋めて眠りに就いた
2日に渡り芳村を腕に抱いて眠れる事に……やっと俺の者になったと実感と嬉しさが込み上げてくる。
やればできる……いや何事も挑戦か?
大学受験と一緒だな。
努力は報われるって事か。
性欲処理の相手なら強引に、いや誘われたらその時だけの関係で終わる……が、芳村とはそんなヤルだけの関係では終わりたくないと、この先もずっと側に居て付き合っていきたいと思い、なかなか手出しは出来ず悶々とする日々を過ごしてた。
好きだ.好きだとバカの1つ覚えみたいに連呼し思いを伝えた。
……頑張って長かった。
俺は改めてぐっすり俺の腕の中で眠る芳村を抱きしめ俺も眠りに就いた。
また、明日の朝イチで芳村の顔が見れる!
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