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第96話
ピンポ~ン♪…ピンポ~ン♪…
寝てるのか?
芳村の部屋の前でチャイムを鳴らすが、直ぐには出て来ない。
もう1度チャイムを鳴らす。
ピンポ~ン♪…ピンポ~ン♪…
合鍵使うか?
部屋の前で迷ってると、部屋の中から「誰?どなた?」と声が聞こえた。
起きてたか?
「俺、海堂!」
「えっ! 海堂⁉︎」
そしてドアが少しだけ開きドアチェーンロックを掛けたまま覗いて、俺だと確認し慌ててドアチェーンロックを外しドアを開けた。
「どうした?こんな時間に。来るのは明日だ…んぐ…」
俺は玄関に入り話してる芳村を抱きしめた。
「会いたかった‼︎」
俺の背中に、芳村の手が回ったのが解った。
あれ以来こうやって抱きしめると、芳村からも抱き返すようになった……あ~~やっと会えた。
その手で実感した。
「……私も…会いたかった」
照れ臭いのか?
小声でそう話す芳村の声は俺の耳に届いてた。
芳村も⁉︎
嬉しさで抱きしめる腕に力が篭った。
「か.海堂……少し緩め…んむ…」
俺は抱きしめてた腕を離し、我慢出来ず芳村の唇を奪った。
驚いた顔をした芳村だったが、目を閉じ素直に俺のキスを受け入れてくれ、俺も目を閉じ芳村の咥内を味わう。
咥内に舌を入れ芳村の舌と絡めて唾液と舌を吸う。
クチュクチュクチュ…チュパチュパチュパ……レロレロレロ…クチュクチュクチュ……
「ん…んん…」
激しくなるキスに、芳村は俺の背中を軽く叩き制する
やっと満足して唇を離し、あのクリスマスの日お互いの気持ちが通じ合った事が嘘じゃないと実感した。
あの日から、ほぼ毎日電話してたが…好きだとも言い合ってたが……日が経つにつれ、現実に目が覚め常識人の芳村の気持ちが変わるんじゃないか?と、こうして実際に会うまで一抹の不安も俺の中であったのも事実だった。
大丈夫だ!
芳村が俺を好きな事は変わってない!
大丈夫だ.大丈夫だ‼︎
心の中で何度も呟きやっと安堵した。
「……海堂、来て早々玄関先でする事では無いだろう?……ともかく入れよ」
そう言って、先にスタスタ…歩いていく背後から着いて行った。
照れたように話す芳村が可愛い~。
あの日から素直になった芳村は何をやっても何を言っても俺には可愛らく見えて仕方ない。
「寒かっただろ?コーヒーでも入れる?それともお茶?」
「ん~、薄めのコーヒー」
「解った」
コートをソファの背に掛け座り待ってると、芳村が2人分のカップを手に持って1つを俺に手渡し隣に座った。
「で、どうしたんだ?こんな夜中に」
「31日に会うって約束したじゃん」
暫く考え時計を見て、俺の言ってる事がやっと理解した芳村は溜息を吐いた。
「あのねぇ~、普通31日に会うって言っても夜中の12時過ぎに来るとは思わないだろ?確かに31日だけど……はあ~~、お前って奴は…」
困った奴だと呆れながらも目は笑ってた。
「だってよぉ~。明日の朝まで待ってらんなかった! 1分1秒でも早く会いたかった!」
正直な気持ちを話すと芳村は頬を染め恥ずかしそうだ
「海堂って…情熱的だよな?自分で言ってて恥ずかしくない?聞いてる方が恥ずかしい~よ」
「何で?俺、他の奴にこんな事言った事ねぇ~し、そう思わせるような奴も居なかった。マジで好きな奴には俺の気持ち言わねぇ~と解ってくれねぇ~だろ?俺、芳村に本気だから‼︎」
顔を手で覆う芳村は余程恥ずかしいらしい。
そんな芳村の反応が可愛い。
「解った.解った。もう言うな、聞いてて恥ずかしい」
「解ってくれれば良い。解んねぇ~なら、これからも何度でも言うからな」
俺の本気の気持ちを芳村にも解って欲しかった。
「お前の気持ちは解った。今日はもう遅い。それ飲んだら寝よう」
そう言って芳村は寝室に行き戻って来ると
「そのままだと、リラックスできないだろ?これに着替えろよ」
手に持ってたダークグレーのスウェットを差し出され俺は受け取りながら
「俺の?」
「そう。明日から3日間泊まるなら、部屋着あった方が良いと思って買って来た。前のは、夏だったからTシャツとハーフパンツだろ?流石にそれじゃ寒いと思ってな」
芳村も俺が泊まりに来るのを楽しみにしてたのか⁉︎
そうなら嬉しい、いや俺用のスウェットを買う事がそう物語ってる。
ギュッとスウェットを握り締め、嬉しさで叫んでしまいそうだった。
「……マジで嬉しい」
「それくらいで?スウェットなんて幾らもしないぞ。早く着替えろよ」
俺を茶化すような口振りだが、芳村も俺の気持ちは解ってるはずだ。
芳村は人の気持ちを汲み取るのが上手いからな。
コーヒーカップをキッチンに片付けに行った芳村を見て、俺はその場で着替え始めた。
俺にぴったりのサイズだ。
芳村にしては大きいし、やはり俺の為に買ったんだ。
「着替えたか?ぴったりだな。黒かその色か迷ったけど、その色で良かった。凄く似合ってる」
飾り気がないダークグレーの無地のスウェットだが、芳村が選んでくれ似合うと言ってくれた。
やはり俺用の為の部屋着だ。
いつでも泊まりに来て良いって事だよな。
そう思うと、益々嬉しさが込み上げてくる。
「俺は何着ても似合うからな。でも…ありがと」
嬉しさと照れもあり、ついそんな事を言った。
「その台詞この間も聞いた気がする。ま、良い。寝ようか」
笑いながら、俺が脱ぎ散らかした服をハンガーに掛け寝室に向かう芳村に思わず声を掛けた。
「一緒に、ベットに寝て良いのか?」
「ソファに寝たいなら、どうぞ」
振り向き笑って話す芳村も楽しそうだ。
「嫌だ。一緒に寝る!」
「子供か⁉︎」
寝室に入る芳村の後を追い俺も寝室に入った。
芳村はクローゼットに俺の着て来た服を掛け、ベットに入って「突っ立ってないで入れば?」ベットの半分を開け布団を持ち上げ待ってた。
俺は滑り込むようにベットに入り、隣の芳村を抱きしめた。
「あったかい!」
芳村と抱き合ってると心が温かくなる。
芳村の方は俺に抱きしめられ胸に顔を埋め
「海堂と寝ると安心するな。海堂の体が大きいからかな?包み込まれる感じがする」
芳村がそう思ってくれた事が男として凄く嬉しかった
「もっと芳村が俺に甘えられるような男になる」
今直ぐには無理でも、これから先何年掛かっても良いから、芳村の安らぎの場所になりたい‼︎
クスクスクス……
「何が可笑しい?」
可笑しいな事は言ってないはず……それより男らしい事を言ったと思うが……。
「海堂の方が構ってちゃんで甘える方だと思うけど?自分で気が付いてないのか?それと…あまり頑張り過ぎるな」
構ってちゃん?甘える方?
強面だとか横暴だとかは良く言われたが…そんな事言われた事がなかった。
芳村が言うと俺の本質は……そうなのかも知れない。
それも本当に自分の本質を見せられる奴だけに、無意識に見せてるのかも……。
じゃあ……心を許してる伊織や祐一も俺の事、構ってちゃんとか甘えん坊だと思ってるのか⁉︎
そう思うと気持ち悪い‼︎
「なあ?芳村にそう見えるって事は……伊織や祐一もそう思ってるって事か?そんな事言われた事ねぇ~けど」
そうあいつらに思われてるなら……恥ずかしくって、これからどんな顔すりゃ~良いんだ?
そう思って芳村に聞いてみた。
「さあ?それは解らないけど……成宮や桐生は年齢も一緒だし、そう思ってないとは思うけど。私が歳上って言うのもあるのかな?」
「それ聞いて安心した。あいつらに構ってちゃんとか甘えん坊なんて思われてたら心外だっつーの! 生きていけねぇ~‼︎ 芳村にしか、そんな姿見せないから誰にも言うなよ‼︎」
クスクスクス……
「どうしようかな~~。成宮や桐生に言ったら笑うだろうな~~」
「こら~~。止めろ~~」
楽しそうに俺を揶揄って笑う。
「あいつらに言えないように、その口塞ぐぞ‼︎」
俺は芳村の唇を塞ぎ、今日2度目の深いキスをし舌を絡めて咥内を蹂躙し唇を離す。
「言わないか?」
「……言いません」
「何だ~~。言うって言ったら、またキスしようと思ったのに残念。ま、そうしたらキスで治らないかもな」
今日はそのつもりはなかったが、暗にセックスするかも…と、遠回しに言って芳村からの反応をみた。
「………今日は……心の準備が……覚悟できてない」
芳村は俺の胸に顔を埋め小さく言った。
今日は?
完全拒否されなかった事と明日以降なら良いのか?
淡い期待が持てる言い方だった。
顎辺りに芳村の髪が当たってくすぐったい。
俺は芳村の髪にキスし、頬を当てギュッと抱きしめた
「今日はシネ~よ。明日までに、心の準備やら覚悟しておけよ。俺は芳村の心も体も欲しい。今日はこのまま寝よう。おやすみ」
「……う…ん……ありがと」
俺は芳村を抱きしめ眠りに就いた。
こうして俺達の蜜月が始まった。
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