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第113話

「はい! 席に着くように」 ザワザワ…登校後に友達と喋る者や机に頭を乗せ寝てる者と思い思いに過ごしてたが、教室に入って来た芳村の姿を見てガタガタガタ…と自分の席に着く。 教室を見回して、俺と目が合ったが直ぐに目を逸らし担任としての顔でHRを行った。 祐一に言われてたが、やはり寂しく感じた。 「おはよう。全員揃ってるな。受験終わった者は良いが、一般入試で受験する者も居る事を忘れるなよ。一般入試受験する者は泣いても笑っても最後の一踏ん張りだからな、気を抜かないように。それと2月からは自由登校になる、基本は自宅学習だな。有意義に過ごすように。実質、学校に登校するのも1月いっぱいって事だな。あと登校するのは卒業式と前日練習が全員が揃う日だ。いずれにしても残り少ない学校生活だからな。あとは……寮生は卒業式終わった日から2週間以内に退寮だからな。そのつもりで。じゃあ、以上だ」 芳村が残り少ない学校生活のスケジュールやらを話してるのを見つめてた。 たぶん、俺はニヤニヤしてたかも知れない。 あの蜜月の数日の正月を過ごし、芳村が実家に帰省してから初めて会う。 あの凛とした佇まいとしっかりした物言いの芳村が、恋人の俺の前では可愛いくなるんだと思えば芳村を見てニヤニヤするのも仕方ないと思う。 俺の恋人なんだよなぁ~。 学校側にも他の生徒にもバレるわけにはいかない秘密の関係だ。 秘密の関係にドキドキ…と胸を高鳴らせスリルを味わう、そう言うのが好きな奴も居るかも知れねぇ~が、俺には無理だな。 誰の目も気にせずに堂々として居たい。 その為に…いや、芳村の為に今はバレるわけにはいかないのも納得してる。 あと少しだ! そう言えば、芳村、疲れ取れたかなぁ~。 帰省し戻ってくる日に連絡くれる事になってたがなかなか電話もLineも無かった。 何かあったのか? それとも帰省が延びたのか?  心配だったが帰省して家族で過ごす時間を邪魔するのも…と思い、俺からの電話もLineも控えてた ん~、こっちから電話するか? Lineの方が良いか? 連絡するか迷いながらもずっと待ってた、そして芳村からの連絡が来たのは22時過ぎだった。 部屋に帰って来た連絡と実家での話しを少し聞き明日が学校勤務と言う事もあり早めに電話は終わった。 何だか素っ気ない電話に、少し様子がおかしく元気が無いように感じたが……今日の様子だと俺の思い過ごしだったようだ。 たぶんあの時は帰省疲れだったのかもな。 それが2日前の事だったが連絡をくれ帰って来た事に嬉しさと安堵もしてた。 HRが終わり教室を出て行く前にチラッと俺を見たが、そのまま何事も無かったように教室を出て行った。 今日は良く目が合うと思った。 俺が見てる事もあるが、そのくらい芳村も俺を見てるって事だ。 そう思うと嬉しかった。 あと担任としての芳村を学校で見るのも1か月位か。 2月中は自由登校で学校に来る事もないしな。 その間は免許代を稼ぐ為にバイトして……芳村とも会いたいし……そうだ! 金曜の夜から土曜日.日曜日まで芳村の所に泊まり日曜日の夜に帰れば良いか。 平日は学校もあるだろうし……そうするか。 あとで芳村に聞いてみよう‼︎ やはり俺は表には出さなかったが浮かれるのは自分でも解ってた。 それから俺は昼休みには教務室に行き話しをしたり昼寝したりし、夜には電話し少しでも芳村と話したいと行動してたが、芳村は話しをしてても何か考え事をして上の空だったり何となく様子がおかしかった。 「何かあったのか?」と聞いても「……いや、何でもない」と返事が返ってくるが、明らかに様子がおかしい。 それでも「好きだ」と話すと「……私もだ」と返事が返って来る事に安堵してたが、様子がおかしい芳村に一抹の不安と何度聞いてもはぐらかす返事に寂しさとイラつきもあった。 年下だからって頼りにならない!って事か⁉︎ 学校が始まってから…いや、帰省してから明らかにおかしい⁉︎ 何か実家であった? それは俺と2人っきりの時だけで、他の生徒の前や授業中の芳村は教師として以前と変わらない態度で接し他の奴には解らないらしい。 その証拠に祐一や伊織に聞いても 「いつもの芳村じゃん」 「変わらねぇ~けど?」 そう返事が返ってくる。 そう思うのは……俺だけ? おかしいと思いながらも3日が経ち、明日の土曜日から泊まりに行って良いか?聞こうと思い放課後に教務室に向かった。 その泊まりに行った時に何があったか?問いただそうと考えてたが……そんな俺の思いとは裏腹に…芳村から告げられた。 その内容は俺を天国から地獄に突き落とすような話だった。

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