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第121話
教務室を出て廊下を走って、教室まで行った。
教室に入ると、祐一と伊織が机の上に腰掛け待ってた。
俺の姿を見て2人は驚いた顔をした。
「おい! 龍臣、大丈夫か?」
何を言われてるのか?解らない。
「お前、顔面蒼白で顔色悪いぞ」
そう言う事…か。
顔面蒼白にもなる‼︎
2回目だが…自分のしでかした事に罪悪感を感じてるからだ。
あの時…幾らカーッとしてたとしても……他にセックス以外にやる事はあったはず…。
これで芳村とは……本当に……終わったな。
俺がどんなに好きでも……もう、許す事は無いだろうし…散々酷い言葉を投げ付けたしな。
俺は項垂れ震える声で「…大丈夫…だ」それだけは何とか声に出した。
本当は…祐一と伊織に縋り助けを求めたかった……もう1人ではどうにもならず抱え切れなかった。
誰か……どうにかしてくれ‼︎
俺の様子がおかしいと思ったんだろう、2人から話し出した。
「俺達ずっと龍臣から何か話してくるまで待ってた……けど、もうそんなお前の姿を見て待ってられねー。今日は何があったのか?全部洗いざらい話して貰う!」
「俺も祐一と同じ気持ちだ。芳村の事だろ?何で俺達に相談しない‼︎ 1人で考えてもどうにもならない事でも、3人で考えれば何か解決できる方法が浮かぶだろ?もし、浮かば無かったとしても一緒に悩み考える事はできる‼︎ それが友達だろ?」
項垂れてた俺は顔を上げ2人を見た。
祐一も伊織も、俺を真っ直ぐに真剣な目で見てた
俺は柄にも無く泣きそうになり声が震えた。
「ありがと。もう俺1人じゃ……悪い、話し聞いてくれか?」
そう話すと、やっと2人は笑顔を見せた。
「待ってた」
「やっと言ったな」
そして長くなると思い鞄を持って教室を出て、寮の俺の部屋で話す事にした。
寮までは黙って無言で3人共歩いてた。
俺は2人に感謝の気持ちでいっぱいだった。
部屋に着いて、祐一と伊織に部屋着を貸して俺も着替えた。
「明日は休みだ。とことん話し聞いてやる」
「全部話せ」
今日は泊まり話しを聞いてくれるらしい。
1人で居たくなかったから……助かった。
テーブルを囲み、何から話せば良いか考える俺に祐一が聞いてきた。
「俺達が聞いたのはカラオケボックスで、芳村と付き合う事になったと言う所までだ。あれから何週間も経ってないぞ?あんなに惚気て嬉しそうだったのに、その後に何があった?」
「龍臣が機嫌悪くなってったのも、学校始まって1週間ぐらいからか?芳村と何かあった?ただの喧嘩じゃないんだろ?」
俺は祐一と伊織に芳村が帰省して戻って来てから何となく様子がおかしいと感じた事からさっきあった…いや、自分でしでかした事までを事細かく話した。
祐一と伊織は黙って真剣な面持ちで聞き、たまにしかめっ面をしたり驚いたり、そして溜息を吐いたりして最後まで聞いてくれた。
3人の部屋の空気が重かった。
「そんな事があったのか?それじゃ、お前が機嫌悪く自暴自棄になってたのも解る。俺、龍臣の気持ちも知らずに……喧嘩吹っかけたみたいで、悪かった。ごめん」
伊織が謝ってきた。
「それは俺が何も言わずに居たからだ。誰かに八つ当たりしたり憂さ晴らししてた。俺も悪かったんだ」
お互い反省してると祐一が間に入った。
「それはお互い様って事で。それにしても、何で芳村は急に結婚とか言い出したんだ?おかしくないか?だってよ、男同士とか教師と生徒とか歳上の事とか全部解った上で、納得して龍臣を好きだって言ったんだろ?急に、心変わりするか?それまで散々悩んだはずだ。なのに、急にって変じゃねー」
「確かに、俺も突然言われて何がなんなのか解らなかった。ただ芳村が言うには、帰省して親から結婚話しが出たと安心させたいと言ってた。それが要因で彼女との結婚に繋がったと思う」
祐一は燻しげな顔で何か引っかかってるようだ。
「やっぱ変だ。だってよ、帰省して親に結婚の話しをされたって言うが、真剣に親が言ったとは思えない、話しの流れで深い意味も無く言ったなら…まあ…解るけど。30歳過ぎで、まだ1人だとかなら親も心配して話すとは思うけどよ~。芳村まだ若いじゃん。俺らと5~6歳しか変わんねーはずだぜ」
確かに……祐一の話すのも一理ある。
じゃあ、何で結婚の話しを持ち出してきたんだ⁉︎
今度は、伊織が気掛かりに思った事を話し出した
「それもだけど、俺には芳村が2股掛けてたとは思えないんだよな~。あの芳村がそんな不当な事するかな~?結婚の事も2股掛けてるような事も、何か裏があるんじゃねーの。俺には、芳村がわざと龍臣に諦めさせるように仕向けてるとし思えない、諦めさせるって言うか.憎まれる事を覚悟で遠ざけてるって感じ?そもそも芳村は2股掛けたって言ったのか?彼女と続いてるって聞いた?」
そう言えば、ちゃんと聞いてない。
あの時……。
俺は一筋の光が見えた気がした。
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