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第122話

「そう言えば…芳村から結婚しようかと思ってると聞いた時……相手は彼女とは言わなかった。俺が勝手に彼女と結婚するんだと思い込んで、そして2股掛けられたとカーっとなって……2股掛けてたのか?彼女と別れたんじゃねーのか?と責めたけど……芳村は黙ったまま、そうだとも違うとも言わなかった。俺が勝手に思い込んでた」 祐一と伊織は顔を見合わせてた。 「芳村が龍臣にわざとそう思わせるように仕向けたんだよ、たぶんな」 「俺も伊織の言う通りだと思う。なぜ、芳村がそうしたのか?は謎だ。何か、芳村は考えてそうしてるんだろう。それが何なのか解れば」 祐一と伊織は俺の味方だ。 ちょっと俺寄りの考えだと思う。 本当に、2人が話す通りなのか?  「……基本的な事かも知れない。結婚話や2股はダミーだとしても……俺を好きじゃなくなった…とか?常識人の芳村は帰省した事が切っ掛けで、現実世界に我に返ったとか?そんで、やはり男同士の関係に未来が無いと不安を感じたとか?」 俺はずっと不安に思ってた事を全部言った。 「龍臣を好きじゃなくなったとかは、芳村じゃないから解んねーけど。男同士の恋愛には、芳村もこの学校に居るんだからある程度解ってるだろ?その上で龍臣を好きになったんじゃね~の。俺と祐一には解んね~けど、男を好きになるのも男とのセックスする事もノーマルの人間には相当な覚悟がいるんじゃねーの。それも興味本位でスル年齢じゃね~し芳村常識人だし、ちゃんと考えてたはずだ。ましてや受けだろ?相当な覚悟はいるはずだ。男とか関係なく本当に好きじゃなきゃ、今まで男に興味ない奴には無理だろーが。……まさか龍臣が受けって事はねーよな?」 最後は、冗談なのか? それまで納得する話しをしてたが……こいつは本当にバカだ。 「そんなわけねーだろーが‼︎ 受けなんて無理.無理‼︎ 俺には幾ら好きでも無理だ!」 伊織がニヤッと笑った。 「だろ?男を受け入れるって言う事は、そう言う事だ。今まで女しか相手にして無かったんだ、相当な葛藤もあったと思うぜ。それでも龍臣の事が好きだから受け入れたんじゃねーの」 伊織に引っかけられたが……妙に納得した。 畳み掛けるように祐一も話す。 「それに今日だって、本当に嫌なら何としても抵抗したんじゃねーの。幾ら、龍臣が半分脅したとしても芳村だって男なんだから。俺は今まで伊織と龍臣と話して総合的にみて……芳村はまだ龍臣を好きだと思う。好きなのに、なぜ遠ざけるのか?それが解らないが……」 「結局、そこで話しが終わるんだよな。何が原因なのか?それが解らないと、根本的な解決はできない。芳村に聞いても答えないだろうし」 確かに……。 どうすれば良いのか? 何を考えてる芳村。 俺と別れてまで……そんな大切なことなのか? 「そうだろうな。でも、お前達のお陰で少し希望が見えた。俺、さっきまで芳村に酷い事したと罪悪感で押し潰れそうだった。頭にきてカーっとなってヤッちまって……もう終わりだ!と思ってた。芳村にも、これで完全に嫌われたってな。でも、お前達が一緒になって考えてくれて、こんがらがってた糸が少しだけ解けた。結婚の事.2股の事も俺の思い込みだと思う。芳村がわざとそう思わせるように仕向けた罠に引っ掛かり、腹が立って頭にきて嵌った。今、冷静になれば、きちんと解る事なのに……ダメだな。他の奴らに八つ当たりして、芳村の授業もわざとこれ見よがしにさぼったりして……子供だった」 落ち込む俺の肩に、ぽんっと手を乗せ 「俺達はまだ子供だ。無理して、大人にならなくても良いじゃん。子供には子供にしかできない事もある。大人にはできない情熱や突っ走る事とかな、常識なんてクソくらえだっつーの! そんなの大人になったら自然と身につく。今しかできない事をやろうぜ。諦めが悪いのも子供の特権だし」 もう片方の肩にも手が乗っかった。 「偶には、良い事を言うな、伊織の言う通りだ。欲しい物を欲しいと駄々捏ねるのも子供の特権だまだ芳村の事諦められないんだろ?好きなんだろ?」 俺は2人の顔を交互に見て話す。 「ああ、こんな事があっても……2股掛けられたと思った時には、信頼してた分…裏切られたと憎む気持ちもあった……それでも、やはり芳村が好きな事は変わらない。こんな事言うと大袈裟かと思うが……俺は一生一緒に居る相手は、芳村だと思ってる。この先……良い女も男も出て来るかも知れねーが……俺は外見だけじゃなく芳村の内面から好きになった。こいつだ‼︎と初めて会った時に直感した。俺は昔っから、本当に好きな物とか欲しい物は絶対に手に入れてボロボロ…になるまで、手元に置いて大切にするタイプだからな」 遠回しだが、芳村を大切にすると宣言したようなもんだ。 「可哀想に……芳村…ボロボロにされちまう」 伊織が重い雰囲気を軽くしようと話す。 祐一もそれに乗っかった。 「最後は、俺達で葬ってやろうぜ」 「そうだな。最後は綺麗にしてやろうぜ。特に、体な」 「芳村の体を拝めるなんてな」 2人のやり取りにムッとし  「誰にも見るか~~! 俺の者だ‼︎」 くっくっくっくっ…… はははは…… 「その調子で、いつもの強気の龍臣で居ろよ」 「そう.そう。傲慢で俺様な龍臣じゃないと張り合いがない!」 「誰が傲慢で俺様なんだ‼︎」 2人は声を合わせ 「「龍臣‼︎」」 そして声を出して笑った。 俺は渋い顔をしながらも、心の中では2人に感謝した。 俺は1人じゃなかった。 俺の気持ち何か解んね~って、自分勝手に思って遠ざけたのに……俺の気持ちを理解しようと一緒に考えてくれた。 本当に、こいつらには頭があがんねー。 そして腹が減り、食堂の冷蔵庫から勝手に食べ物を持ってきて、それとカップラーメンを食べた。 こいつらが居てくれて話しが出来て、少し気持ちが晴れた。

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