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第126話

自由登校になり、俺は実家に帰ってた。 芳村と教務室で話した2日後には祐一と伊織と会い、またもやカラオケボックスで適当に入れた曲をBGMに芳村との事を話した。 「そうか……龍臣は、それで良いんだな」 「これから先、芳村とやっていく事を考えて決めた。先の事を考えると…これからも色々な事が起こるだろ?その度に、芳村が1人で抱え悩む事を考えたら……俺に話す選択をして欲しいからな。そう言う事も含めて1カ月の猶予を与えた。芳村を信じるしかねー」 今度は、神妙な顔で聞いてた祐一が話す。 「そうだな。龍臣は今だけじゃない先の事を考えて出した結論だろーから、俺達がとやかく言う事でもねーけど。もう、その歳で1人の人に決めて良いのか?」 「ああ、芳村に一目惚れした時には決めてた。俺には芳村しか居ないってな。俺も生半可な気持ちで居ない、覚悟を決めたんだ……だから、尚更…芳村にも今だけじゃない、これからの事も考えて欲しいんだ。一緒に考え悩み共に人生を歩んでいきたい。お前達から教わったからな」 「龍臣がそう決めたら俺達は応援するよ。あとは芳村の気持ち次第…か。芳村も頑固だよなぁ。絶対に言わないところがよー。解んねーけど、それくらい重い問題なのかもな。でも、考えようによっては……信頼できるって事か?将来を決めた相手には尽くすタイプかもな」 俺もそう思ってただけに、それには同意し頭を縦に振った。 「今の状況は良くねーけど……龍臣が羨ましい。そんな相手に出会えた事が……。俺も祐一もたぶん…ずっと独身だろーな」 羨ましさと寂しさが入り混じった顔で話す伊織。 こいつ、寂しい癖に……早く伊織と祐一にも一生を共にするだけの運命の相手に出会えるといいな 俺が芳村と出会ったように……。 「一緒にするな!……でも、ずっとお互い独身なら老後はどっか一緒の老人ホームに入るか?」 祐一が面白ろ半分で話すと伊織もそれに乗っかる 「良いねー。で、老人ホームでも爺さん相手に頑張っちゃう?」 「バカかー⁉︎ そん時には、俺達も爺さんで枯れてるだろーが」 「それもそうか……いや、祐一はそうかもしんねぇーけど、俺は違う!」 「はあ?どんだけ体力バカなんだよー」 伊織の顔を祐一と2人で見て……笑い出した。 ははははは…… くっくっくっ……ははは…… 「俺の体力と性欲は無限だー‼︎」 叫ぶ伊織に、また大笑いした。 やっぱ、こいつら良いなぁ~。 最後には俺の気持ちを軽くする為に、いつもバカな話をしてくれる。 一生の友達だ‼︎ もし…こいつらが、この先の人生で悩む事があったら、一緒に悩み話しを聞いてやろう……今、こいつらが俺にしてくれたように。 一頻り笑った後で伊織が口を開いた。 「で、この期間にバイトして金貯めて、免許取りにいくって話してたじゃん。バイトどこにすんの?決めた?」 「俺は、まだ決めてない」 それどころじゃなかったからな。 「俺は喫茶店にした。接客業を学べるからな」 「「え~~‼︎ 祐一が~~喫茶店⁉︎」」 俺と伊織は驚いた。 あの無表情で、どっちかと言うと無愛想な祐一が……接客業? 「本当は、夜の接客業が良いんだけど、バレたらまずいからな。そっちは大学に入ってからバイトしようと思う。居酒屋だとうるせーしBarでカクテルの作り方とか酒の事も学びたいと思ってる」 将来的に自分の店を持ちたいと言ってた祐一は将来に向けて考えてる。 成る程、それで喫茶店で接客業…か。 「祐一は決まったんだな。俺は引越しセンターにしようと思ってる。で、龍臣さぁ、バイト決まってなかったら一緒にやんねー」 引越しセンター…か。 良いかも! 「良いぜ!」 「よっしゃー。で、明日には面接行こうぜ」 「解った」 こうして俺達はそれぞれ自由登校期間をバイトで過ごす事に決まった。 引越し作業は人手が足りず直ぐに面接でバイトは決まり、俺達は早速次の日からバイトをした。 最初の3日ぐらいは正社員の2人と俺と伊織は教えて貰いながら作業をしたが、それからはシフトが一緒の時もあれば別の日もあった。 体力のある俺達はバイト先でも重宝され、俺は週5日バイトに入り疲れた体で家に帰って飯食べて風呂入ってバタンキューで爆睡し、またバイトに行くと言う日々を送った。 芳村の事を考える暇を与えないように……電話やLineをしたくなってしまう隙を与えないように、ひたすらバイトした。 母さんは体を心配してたが「免許代を稼ぐ」と言うと「免許代なら出してあげるのに、体壊したら元も子もないわよ」と言われ、心配してる気持ちは有り難いと思いつつ「ずっとバイト出来なかったし、やりたいんだ。足りない分は、悪いが出して貰うから」と言うと、言い出したら聞かない俺を知ってる母さんは「無理しないように」と言って納得してくれた。 バイトも2週間も経つと要領も解りだいぶ慣れた そして俺はビルの深夜の警備員のバイトも増やした。 警備員のバイトは時間で巡回すれば良いから、特に何も無ければ仮眠も出来るしバイト代も良く週に3日バイトする事にした。 疲れた体で…それでもやはり芳村からの連絡がないか?スマホを見たりした。 連絡がない事に落胆し……バイトに更に励む。 連絡がないまま……自由登校期間は終わろうとしてた。 これが芳村が考えて出した答えなのか? やはり…俺には何も言わないって事か? 俺の気持ちは……1カ月経っても変わらない‼︎ 自由登校期間は終わり、明日には卒業式練習の為に登校すると言う日だった。 俺は最後のバイトをし疲れた果て爆睡し、スマホに着信履歴があった事に気が付いたのは夜も遅い時間だった。 折り返し電話したが……出ない。 電話を切って…もしや…と思いLineを開いた。 芳村からのLineが届いてた……が、削除されてた何て、Lineしたのか? なぜ削除した? そこにあったのは別れの言葉なのか? それとも前向きな言葉なのか? 内容が解らない……芳村、どうしてだ‼︎ 結局、芳村は最後まで俺には何も言わないって事か。 それが返事って事…か。 俺は次の日の卒業式練習には行かなかった。

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