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第131話
「んじゃ、芳村の悩みも解決したし、これで話も終わったな。俺、2~3日芳村の所に泊まるから。芳村、待ってろ。ちょっと準備してくる」
そう言って嬉しそうに鼻歌を歌い部屋から出て行った。
何で、残して行くんだよ~。
ご両親の前に1人で対峙するのは……居たたまれない……つい俯き畳を見て頭の中で考えてた。
一応の許しは貰った?と言うか.見守る姿勢をとると言う事かな?
まだ正式には許しを貰ってない……これから認めて貰う為に海堂と一緒に頑張ろう。
2人で居る為に……。
「先生、正直に申しますと今回の話しは面を喰らって私共は戸惑ってます。尊が居なければ反対してたと思ってます」
正直な気持ちだろうと思った。
闇雲に反対されないだけこちらが申し訳なく思う。
「芳村先生、あいつには家業が極道と言う事で辛い思いをさせた。龍臣自身は辛い思いや嫌な目にもあっただろが、わし達には愚痴も何も言わずに……。それでグレたりもしたが、わし達はある程度…龍臣の自由にさせてた。それは、あいつは性根が腐っちゃいないと信じてたからだ。親が子を信じてやらなきゃ誰が信じてやるのか?そんな気持ちもあった。それは龍臣を信頼してた私達の気持ちです。その龍臣が先生を信頼し選んだ人なら…これからの2人を見届けてやるとしか今は言えませんが、これからは先生がどうか龍臣を信じてやって欲しい。頼みます」
お父さんが改めて私に頭を下げた。
それだけで充分だと感謝した。
「先生、私からもお願いします。先生も色々悩んだでしょうけど……龍臣も家業や男同士の事はあの子なりに考えたと思います。それでも先生と離れる事ができないとあの子には先生が必要なんでしょう。家(うち)はこう言う家業ですから、先生も辛い事があるかも知れません。でも、どうかあの子の力になってあげて下さい。お願い致します」
そしてお母さんも私に頭を下げた。
本当に、海堂の事を心配し考えてる。
この愛情は海堂も解ってるからグレても性根は腐る事がなかったんだろう。
確かに、海堂に2人の気持ちは伝わってると思う
私は2人の海堂への愛情に感動し、また涙が出てきた。
「あ.ありがとうございます。私も海堂を信じ力になります。これから先、困難な事や辛い事も一緒に考え乗り越えていきたいです。世間的にも……まだ堂々と言える関係では無い事も重々承知の上です。それでも海堂が私の為に…ご両親だけには解って欲しい.知っててしいと言う気持ちを大切にしていきたいです」
頬を伝う涙は……嬉し涙だ。
頭を下げ感謝の気持ちを表した時に襖が開き、海堂の手にはバック1つ持ち立ち、振り向いた私の顔を見て怒りの形相とキツい口調でご両親に文句を言った。
「親父‼︎ 芳村に何言った! 泣かせる事言ったのか?そんなの俺には言えよ‼︎ 俺が芳村を強引に口説いて俺の者にしたんだからな‼︎ 芳村は悪くねーんだよ‼︎ 全て、俺が悪い‼︎ 文句あるなら俺に言えよ‼︎」
私は慌てて海堂を戒めた。
「ち.違うんだ‼︎ これは私が勝手に泣いただけで、お父さんもお母さんも海堂の事を信じて欲しいって.力になって欲しいって、お前の事を頼まれた。それが嬉しくって……」
海堂は私の話しを聞きバツが悪そうに頭を掻き、ご両親に謝った。
でも、誤解だったが海堂が矢面に立って私を庇う姿勢を見せた事が……嬉しくもあり海堂をこれからも信じていけると確信した。
「悪りぃ。俺の早とちりだった」
ご両親は頬を緩め海堂を愛おしそうに見て話す。
「先生が大切なんだな。良い事だ。何度も話すが大切な人が出来るとそれが力になる。大切な人なら、尚更泣かすんじゃないぞ」
「先生。改めて、こんな子ですけど宜しくお願い致します」
改めて頭を下げるご両親に私も頭を下げた。
「こちらこそ宜しくお願いします」
「もう良いだろ?俺達、行くな」
俺は芳村の腕を引っ張り立ち上がらせ、親父達の部屋を出た。
長い廊下を歩いてると部屋から尊君が顔を出した
足音が聞こえたらしい。
「帰るの?」
「ああ、また戻ってくるけどな」
素っ気ない海堂の返事に寂しそうな顔を見せた。
私は尊君の前で屈み顔を見て笑顔で話した。
「尊君、また来るね。今度は一緒に遊んでくれる?」
パァッと明るい顔を見せ、どことなく海堂に似てると思った。
「うん! 遊ぼ、絶対だよ」
「うん! 約束するね」
尊君の頭を撫で約束した。
この子の存在が私と海堂を繋ぎ止めてくれた。
どう言う事情があったのか?解らないが……生まれてきてくれて、ありがとう。
そして尊君を大切にしようと心に誓った。
「芳村、行くぞ」
「あっ! うん。じゃあ尊君、またね」
「うん! またね。絶対に来てね」
手を振ってバイバイする尊君は廊下に出て、いつまでも私達を見送ってくれた。
私も手を振り応えた。
尊君は大人達ばかりの世界で1人で寂しいんだろう。
今度は海堂と一緒に、どこかに遊び連れて行ってやろう。
そして少しずつ仲良くなろう。
あの子のお陰で……大切な存在だ。
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