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第132話
海堂の実家を出て車に乗り、私のマンションへ行く為に車を走らせてた。
その車中で、尊君の出生の経緯を海堂が話してくれた。
「そうだったのか?家庭調査書で尊君が弟だとは知ってたが……年が違い過ぎてるし、てっきり……悪いけど、お父さんの愛人の子を認知したのか?と勝手に思ってた。触れてはいけない事だと思ってた」
「まあ、皆んなそう思うよな。実際、事実を知らない家の者は愛人の子だと思ってるしな」
海堂から真実を告げられ、尊君の幼いながらもしっかりした姿を思い浮かべてた。
「何だか、尊君寂しそうだったな。周りが大人ばかりと言うのもあるのかも。海堂も素っ気なかったし」
「……これでも前よりはマシになった。前は、尊の存在自体無視してた…。話し掛ける事も無かったし尊を見るのも嫌だった。俺の汚点って言うか……俺の所為で親父達に向こうの親に頭を下げさせた事が情けなく自分に腹が立った。尊を見ると、その時の気持ちを思い出してたからな」
「それは……尊君には関係ないだろ?お前自身が悪いのに…尊君の所為じゃないよ。私は…海堂に子供が居ると聞いた時には驚いたし、そんな人が…子供を作っても良いと思うような相手が居た事が…あの時には正直言ってショックだった。でも、帰る時には…尊君を見て、この子が生まれてきてくれて良かったと思った。この子のお陰で海堂と一緒に居られるってな。だから、この子を大切にしようと思った。だから海堂もそう思って尊君に接して欲しい」
「尊に関しては、さっき説明した通りだ。愛しても好きでもねー相手だったが、その場のノリで1回だけだったが運が悪いつーか.予想外の子だよ。
顔なんか全然覚えても居ねーし。でも、ありがとう、芳村がそう言ってくれて、俺も今回は尊が居てくれて良かったと思った。尊は俺と芳村の為に生まれてきてくれたのかもな」
「たぶん…そうだよ。これからは2人で大切にしよう」
「だな」
「うん‼︎ …それとお前が言ってた汚点だとか予想外の子だと絶対に今後は言うなよ。特に、あの子には知られたくないからな。これから先、あの子に本当の事を言う時があると思う。その時には、事情があって別れたが愛しあって生まれた子だと言って欲しい」
「何で、そんな嘘を?」
「あの子には生まれてきちゃいけない子だったんだと思って欲しくない。どんな子だって愛しあって生まれたんだと言う事だけで、それが糧になり生きていける。これからは私達が愛情を注いでやれば良いんだから」
「そうだな。俺も家業の事で色々言われたり遠まきにされたりしたが……子供ながらも親父と母さんの愛情は解ってたからな。だから今の俺がある!そうだな、そう思ってた方が尊には幸せなのかもな」
「嘘でも……優しい嘘なら幸せになる為の嘘なら時には良いと思う」
「でも、その事だけだぞ‼︎ 芳村は嘘吐きだからな今後はぜってー許さねーからな‼︎」
「……うん……ごめんな」
「俺の将来の事を心配してくれた芳村の気持ちは嬉しいが、跡継ぎの件で悩んでたなら俺に言ってくれれば直ぐに解決したんだ。まあ、今回は尊が居た事で直ぐに解決できたが……もし尊が居なくても何らかの解決法はあったはずだ。跡継ぎの件だけじゃない……これからは1人で悩まずに、俺に言ってみろ。どんな事でも2人で考え話し合って解決していこう! 俺も芳村に相談するし……な?」
「ごめん…これからはそうする」
私と海堂との蟠(わだかま)りがなくなり、今は清々しい気持ちで何でも話せる。
「それと、私から1つ良いかな?」
「何でも」
「ご両親に、私との事…隠して付き合いたくないと言ってくれて、ありがとう。嬉しかった」
今この時に素直に感謝の気持ちを伝えたかった。
「そんなの当たり前だろ?ずっと一緒に居るんだ隠してもバレるに決まってるし。世間には解って貰え無くても、俺の大切な家族の前では、俺の好きな人は堂々と隣に居て欲しいからな」
こう言う男らしい所が凄く好きだ。
「海堂の気持ちが凄く嬉しいよ。あと、ご両親も複雑だっただろうけど……反対はされず……本当に良かった。反対されると覚悟してたから……気が抜けた」
「芳村、俺の親父と母さんだ。伊達に、極道の頭をしてる訳じゃねーよ。肝っ玉が座ってるし人情もある。俺の所は極道って言っても、薬はご法度だし世間には迷惑掛けるなってのがモットーだからな。親父はそこら辺のヤンチャ者や世の中のはみ出し者の面倒も見て…そんな親父に皆んな感謝してる。器がでかく懐が深いそんな親父を俺は尊敬してる。母さんもそんな親父に尽くしてるしな色々迷惑も掛けたし、そんな2人には嘘や隠し事はしたくないんだ。解って貰え無くても知ってて欲しかった」
「良いご両親だな」
「ああ、俺の親だからな」
海堂がどんなに両親を好きなのか、良く解った。
また私はそんな海堂を更に好きになった。
2時間弱の車中で、今まで話せなかった事をたくさん話した。
海堂の想い、そして私の想いを……。
「腹減った~。あっ!そこの牛丼屋に行こうぜ」と言われ牛丼を食べて、そしてお腹がいっぱいになった海堂は車に乗ると直ぐに爆睡した。
色々口では言ってたけど……海堂なりに、やはり親に話すのは緊張してたのかも知れない。
男を好きになったと言う事も男の恋人を紹介するのも……勇気と覚悟が必要だ。
私だったらと思うと、海堂みたいには……言えないな。
東京と京都と言う事もあり、わざわざ話す事もないと思ってる。
もし……そのうち……言わなければならない時がきたら……覚悟を決めよう‼︎
……海堂の側にずっと居る為に……。
そして……今は…ただ何も考えず海堂の側に居たい。
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