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第133話
ザァザァザァ……
「はあ~、疲れた…」
シャワーを浴び風呂に浸かり、やっと一息ついた
それにしても良かった。
親父達が頭っから反対する態度を取らずに、話を聞いてくれた事に感謝した。
全面的に認めてくれたわけじゃないが、それでも今後の俺達を見届けていこうとしてくれた事が嬉しかった。
俺の本気の気持ちは解ってくれたと思う。
そして……尊にも。
あいつが居てくれたから、全てが丸く納まった。
芳村にも言われたが…これからは一家族として…大切にしていこう。
少しずつだが話すようにもなったが…まだ俺にも尊に対して、どう接して良いか戸惑う時がある。
それは尊も一緒だろう。
小さな尊なら、尚更、戸惑ってるはずだ。
今頃解るなんてな。
でも時間なら、まだまだある。
今までの時間を取り戻せば良い。
芳村も協力してくれるだろう。
「あ~、これで本当に、芳村が俺の者になったんだよな?」
1度手に入れたと思ったら……尚更、ここまで長かった。
実感があるようでない……それは……芳村を抱いてないから…だろう。
心が手に入れば体も欲しくなる。
でもな~……今日まで、芳村も散々悩んで…卒業式やら俺の実家に行ったりと色々あったから疲れてるだろうし…俺は卒業しちまったから、明日からは自由だが芳村は学校がある。
明日が平日じゃなかったら……。
今日は大人しく芳村を抱きしめて寝るだけでも良し!としよう。
これからは好きなだけ誰にも遠慮なくイチャイチャ出来るし…セックスもできるんだし……今日ぐらいは我慢だな。
「さてと、出るか」
ザバッ!
俺は風呂を出て脱衣所で、前に芳村が買ってくれた俺用のスウェットを身に付けリビングに向かう
「芳村~、出たぞ」
「解った。先に、寝てても良いぞ。じゃあ、入って来るな」
そう言って着替えを持ち浴室に消えた。
キッチンに行き、冷蔵庫からお茶のペットボトルをゴクゴク…飲み喉を潤した。
‘先に、寝てて良い’ と言った芳村の言葉で、やはり今日は大人しく寝ようと決めた。
ベットに横たわり芳村の匂いのする布団に……
ここでまた芳村を抱きしめて寝られるんだ‼︎
じんわり実感が湧いてきた。
芳村を待ってるつもりだったが、少しうとうと…してたようだ。
「海堂、寝た?」
ベットの側に立ち、小さく声を掛けられた。
「…いや、寝てないけど…うとうとしてた。ほら突っ立ってないで入れよ」
ベットの片側を空け布団をめくると、芳村は直ぐにベットに入って来た。
「あったか~い」
俺に抱き着く芳村は可愛いらしい。
俺も抱きしめ芳村の髪の匂いを嗅いだ。
あ~、やっぱ落ち着く!
「海堂……こんな事聞くのもどうかと思うけど……諦めようと思わなかった?卒業式までに連絡なかったら、諦めるつもりだったんじゃなかったのか?」
俺は少し考えて
「ん~、諦めようとは考えなかった。ただ……芳村が無理なのか.だめなのか…とは思った。そんでムシャクシャして自暴自棄になったり八つ当たりしたりしたし落ち込んだりした。そんな時に、伊織や祐一が側に居て励まし話を聞いてくれた。諦めようとは思わなかったけど……無理なのかと俺にしては弱気になってた。卒業式までに連絡なかったら…とは言ったけど、諦めるとは一言も言ってない。芳村が俺を好きな癖に素直じゃないから思わせ振りな事を言っただけで良く考えて欲しかったからな」
俺の話を黙って聞いてた。
「そうだったのか。諦めないでくれて、ありがと成宮や桐生の言う通りだった」
伊織と祐一?
ここで2人の名前が出た事が不思議だった。
「あいつらがどうした?」
「あっ! 海堂は知らないってあの時言ってたな。そうか、まだ海堂に黙って……良い友達を持ったな」
妙に1人で納得してる芳村だったが、俺には何の事か話しが解らない。
「どう言う事だ?」
「自由登校になる2~3日前かな?最初は、成宮が私の所に来て、どんなに海堂が私の事を好きなのか力説して、海堂は私の悩みを受け止めるだけの度量もある、素直に全部話してみろって、そして海堂は私を守るって言ってた。その次の日には、今度は桐生が来た。成宮と同じ事言ってたな。海堂が本気で私の事を好きだとか海堂が惚れた私を信じてるって言って帰ったよ。海堂の事をどんなに大切に思ってるか解って凄く心に響いた。そして海堂の友達で居てくれる2人に感謝した」
芳村の話してくれた事は、初めて知った事だった
俺は涙が出そうになった……誤魔化すように、芳村の髪に顔を埋めた。
「あいつら……」
声は震えてたかも知れない。
「海堂の宝物だな」
「ああ、一生付き合える友達だ。でも、1番の宝物は芳村だ。あいつらは2番めだな。3人共、俺にとっては掛け替えの無い宝物だ。俺の一生を掛けて守り抜く‼︎」
「海堂……」
恥ずかしい気持ちを言っちまった。
素直な気持ちだったが、照れもあり話題を変えた
「そうだ。俺、月曜日に伊織達と合宿免許に行って来る。2週間程だから、その間離れるけど…もう余計な事考えるのは止めろよ。芳村はちょっとでも離れると余計な事考えるからな。これからは不安や不満も全て俺に話せ‼︎ そして2人で解決していこう」
「うん‼︎……待ってる」
「あ~、こんな事なら合宿もっと後にするんだった。車の免許取って颯爽と芳村の前に現れて、じっくり口説く予定だったからな。ま、結果オーライだし良いか。明日、学校だろ?もう寝た方が良い。卒業式や俺の実家行ったり色々あって疲れただろ?ゆっくり寝ろよ」
俺はギュッと芳村を抱きしめた。
俺の腕の中で、もぞもぞ動く芳村が隙間を空けて下から上目遣いで俺の顔を見て口を開いた。
「……海堂……海堂が疲れてないなら……抱いて欲しい」
小さな声で言った言葉が一瞬信じられず…そして喜びが腹の底から湧き起こった。
「えっ! 今、何て……良いのか?」
芳村は恥ずかしいらしく、今度は俺の胸に顔を埋めボソボソ…話した。
「何度も言わせるなよ……抱いて欲しいんだ……離れてたし……海堂を……私の者になったと感じたい」
「俺は芳村の者だ‼︎ で、芳村は俺の者‼︎ 痩せ我慢してたが俺も抱きたかった‼︎」
芳村も同じ気持ちだと思うと……心も体も熱くなった。
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