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第一章・2
「見ている分には、美しいんだけど」
そう独り言をつぶやいた、はずだった。
まさか返事が戻ってくるとは思わなかったので、昴はひどく驚いた。
「馬は、あの匂いが良いのですが」
柏 暁斗(かしわ あきと)。
昴の身の回りの世話をする、執事の一人だ。
驚いたのを気取られなかったかな、と昴は赤くなった。
馬場にいた時から、ずっと見られていたのかな?
「馬に鼻を擦りつけられた事はあられますか?」
あるわけがないじゃないか、と思った。
馬の鼻先は、いつも湿っていて美しくない。
あの濡れた鼻面を擦りつけられるなんて、御免だった。
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