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第一章・9
あの束ねた長い髪を解いてベッドに散らせ、黒曜石のような瞳で抱かれる遊女を見るのかな。
何とも言い難い悔しさが、昴の胸に湧いてきた。
美しい、柏 暁斗。
昴は、彼のことを美しいと感じていた。
乗馬をしようか、と考え出したのも、彼がきっかけだった。
以前、馬丁を振り払い暴れだした馬を瞬く間に鎮めて、鞍も掛けずに颯爽と走りだした暁斗は、うっとりするほど素敵だった。
いつもなら2杯で終わらせるワインを、倍の4杯あおってしまうと、昴は暁斗の部屋へと向かった。
柏のように美しい男が、妓館で女遊びなどに耽ってはいけないんだ。
ちゃんと清純な恋人を持って、彼女を心から愛して……。
酔った頭で、身勝手な事を考えながら、昴は執事の間へと乗り込んだ。
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