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第一章・10

 暁斗の部屋のドアを叩く昴は、彼が留守だなどとはこれっぽっちも考えていない。  この僕の訪問に、留守などあってはならないのだ。  傲慢な彼に応えて開けられたドアの向こうには、浴衣を着た暁斗が立っていた。 「どうなさいました?」 「……その服は、なんだ?」  ちぐはぐな昴の受け答えだったが、浴衣を着流した暁斗は気軽に返事をした。 「くつろぐ時には、これが落ち着きまして」  日中は、他の執事と同じようなタキシードを着ている暁斗が、夜にはこんなにラフな姿をしているなんて反則だ。  ギャップ萌え、というやつだ。  黙って勝手に室内に入り込んでゆく昴を鷹揚に迎え入れると、暁斗はドアを閉めた。 「飲みますか?」  すでに酔っている様子の奏に、さらに飲酒を勧めてみる。  何か、酔いたいことでもあったのだろうと暁斗は考えた。  まさか、その原因が自分にあるなどとは思ってもみなかったが。

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