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第一章・11

 出されたウイスキーを断り、代わりにワインを準備させるという真に我儘な昴にも、暁斗は快く動いた。 「何かあられましたか?」 「何が、って?」 「そんなに酔われて。何かあったのでしょう。私でよければ、話し相手くらいには」 「君は、今から妓館へ行くのか?」 「は?」  責めるような、昴の声。  暁斗は苦笑いをした。  どうやら昼間の話を蒸し返しているらしい。  自分はウイスキーをあおると、昴が欲しがっている言葉を返した。 「いえ、遊郭へは行きません」  誰かさんに叱られてしまいましたから、と暁斗は笑った。

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