12 / 193
第一章・12
「まずはバラを贈って、そして初めはキスからで。それもちゃんと訊いてから、でしたね」
酔って赤くなった頬が、さらに熱くなった。
昴は何か返そうと言葉を探したが、うまいこと出てこない。
代わりに、さらにワインを飲んだ。
ぐいぐいと、一気にあおってしまう奏に、暁斗はさすがに心配になってきた。
まだ17歳の昴。
これ以上飲ませるのは危険と感じた。
つい、と窓際に向かった暁斗が戻ってきて手にしているのは、バラのドライフラワーだった。
こほん、と咳をひとつ。
それから芝居がかった身振りでドライフラワーを昴に差し出すと、こう言った。
「バラを昴様に贈りましょう。それから、口づけしてもようございますか?」
昴の手から滑り落ちたグラスが、床の上でごとんと音をたてた。
ともだちにシェアしよう!