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第一章・14
とくん、と胸が疼いた。
漆黒の長い髪。
黒曜石のような瞳。
初めて暁斗に出会った時の甘い衝撃が、甦ってきた。
美しかったのは、姿かたちばかりではない。
その気質。
凛々しく、真っすぐな彼の性分は、傍から見ていても小気味よかった。
そして、その声。
饒舌ではないが、時折響く低音は耳に心地よかった。
キスなら、した事がある。
僕だって、以前付き合った女たちとキスならやった事がある。
今度は、僕が柏を困らせてやる番だ。
「いいよ」
そう言って、昴は彼に向けて唇をわずかに突き出した。
これは想定外だったのか、暁斗はぴたりと動きを止めてしまった。
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