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第一章・17
ここまでくれば、こっちから降参するのは逆に失礼というものだろう。
彼は、本当にキスする覚悟でいるのだ。
いまさら笑ってごまかすなど、この誇り高い主人は許してくれないだろう。
唇が、触れあった。
ぴくん、と昴が跳ねた。
暁斗は、口で昴の唇を覆いその甘味をたっぷり味わった後、顔を傾けて何度も何度も口を吸った。
あぁ、とうとう。
女とキスをした時は、客観的に自分の姿を見ていた。
バラ園で、美しい女と抱き合い口づけを交わす自分を、一幅の絵画のように捉えていた。
こうした方が、美しいから。
そんな理由で、ただ愛のないキスをしていた。
それがどうだ。
昼間、みっともない所を見られた男相手に、すっかり酔った醜態を晒したあげくに唇を許すなんて。
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