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第一章・29
暁斗は固く絞ったタオルで、汚れた昴の下肢を清めた。
まだ胸を大きく上下させて喘いでいる昴は、されるがままに身を任せている。
ようやく焦点の合ってきた眼が、暁斗の姿を探す。
戻ってくる。こちらに。手には、水差しを持っている。
「水をどうぞ」
「……うん」
こくこくと小さく動く昴の白い喉に、うっすらと赤い痕が残っている。
俺が付けた。
俺の付けた刻印。
愛しさが、込み上げてきた。
俺の下で、悦い声で啼きじゃくっていた、まだ幼さの残る麗しの君。
「失礼いたしました」
「……」
無言で、うつむいてしまった昴。
沈黙は、ある時は千の言葉に匹敵するというものだ。
「冷えるといけません。これを羽織って」
暁斗はそう言うと、自分の浴衣を脱いで昴に掛けた。
「ぶかぶかだ」
暁斗の匂いがする。
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