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第一章・31
「柏」
「はい?」
「その、よかったら、僕が。君がしてくれたように、手を使って、だな?」
「んん……」
「柏?」
安らかな寝息が聞こえてきた。
何て事だ。
お返しに、手でしてあげようと思ったのに。
だが、ホッとしたことも事実。
自慰すらも、美しい行為ではない、とやったことのない昴にとっては、手で施すのも難しいところなのだ。
その気持ちだけで充分だ、と暁斗は思っていた。
狸寝入りで、気恥ずかしさは誤魔化した。
そんな綺麗な細い指で俺のペニスを扱くなんて、お気の毒な事はさせられない。
初物をいただけた事だけで、充分満足だ。
後は、昴の吐く息が、規則正しい寝息に落ち着くのを待って、寝た。
果てたわけでもないのに、やたら気持ちは満ち足りていた。
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