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第一章・33

「昴様の匂いは良い香りですから、馬も喜びますよ。きっと」  そのまま鼻を撫でてやってください、と勧められるので、昴は思いきって馬の鼻を手のひらで撫でた。 「……柔らかい」  でしょう!? と馬丁が嬉しそうに笑った。  柔らかい、そして温かい。  命のぬくもりが、確かにそこにあった。 「馬も昴様を気に入ったようですよ。そのまま、鼻筋を撫でてやってください」  一度触れると、気が大きくなるものだ。  昴は馬の鼻筋を撫で、額やその前髪、首と、馬丁の指示通りにどんどん触っていった。  首を優しくとんとん、と叩くと、馬はまるで喜んでいるように感じるので不思議だ。

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