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第一章・34

「馬はいいでしょう?」 「柏」  馬場の柵を挟んで、暁斗が笑顔を向けていた。  そんな暁斗に、昴の表情は、ひどく誇らしげに見えた。  美しい。やはり。 「見てくれ。馬に触れるようになった」 「大きな進歩です」  早く、馬に乗ってみたいな。風を切って、走ってみたい。  暁斗が、馬場に入ってきた。  昴の隣でおとなしくしている馬に近づくと、ひらりと一息で跨った。 「昴様も来られますか? 御一緒に」  手が差し伸べられる。 『昴様もお休みになられますか? 御一緒に』  昨夜の暁斗の言葉と被って、昴は頬を染めた。  そして眼を上げると、暁斗の手を取り軽やかに馬に飛び乗った。

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