35 / 193
第一章・35
馬丁たちが、やんやと囃したてる。
「行ってらっしゃいませ!」
「うん。放牧場を一回りしたら戻る」
暁斗の前に座る、昴。
蹄の音とともに、振動が体に伝わってくる。
跨いだ脚に、馬の体温が伝わってくる。
その動きも熱も心地よく、昴は晴れやかな気持ちになった。
「ねぇ、柏」
「はい」
後ろを振り仰ぎ、昴は手綱を取る暁斗に声をかけた。
「続きは、いつ教えてくれるのかな」
「続き、とは」
「昨夜の、つ・づ・き。教えてくれるんだろう? 楽しみにしてるよ」
「な……ッ!?」
みるみる赤く染まってゆく暁斗の顔。
あぁ、愉快だ。ようやく彼を凹ませてやった!
ともだちにシェアしよう!