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第二章・4
「いや、違う」
昴は左の腕を目の高さにあげ、手にしたバラの花びらで強くこすった。
午後、調べ物をするために図書室へ行った。そこの司書を務めている脂ぎった中年男に、この腕を触られた。
『相変わらず、お美しいですなぁ。昴様』
そう言うと、僕が喜ぶとでも思っているのだろうか。
汗で湿った太くて丸い指が、本を手にした僕の甲に重ねられ、そのまま上へ滑って行って撫でまわした。
肌が粟立つ思いがした。
一介の司書とはいえ、僕の3倍近く年を重ねた年長者、ということで一睨みするだけで許してやったのだ。
正直、クビにしてやりたいくらい不愉快だった。
快楽とはほど遠い、嫌悪感しかなかった。
やはり、相手によって気持ちは変わって来るらしい。
今日に限って、半袖の服を身に着けていたことも迂闊だった。
美しいこの僕の白い腕を見たら、誰でも触れたくなるに違いないのに。
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