64 / 193
第三章・5
ぶどうがたくさん、夕食のデザートに出た。
暁斗にも分けてあげよう、と昴は執事の間を目指す。
大好きなぶどうは、以前なら全部独り占めして食べていたところだ。
それを、愛しい人に分けてあげようというのだ。
「なんて出来た恋人なんだろう、僕って」
浮き浮きとした足取りで、暁斗を訪ねた。
今日はオフの彼は夕刻の修練中だったらしく、木刀の素振りをしていた。
鍛え上げられた裸の上半身は、汗で光っている。
もう、ずいぶん長いこと木刀を振っているに違いない。
勤務時間内の訓練ではない。あくまで、暁斗の自発的なトレーニングだ。
暇を見つけては、自己を磨く事に余念のない暁斗。
そんな彼の、自律した精神が好きだった。
ともだちにシェアしよう!