65 / 193
第三章・6
素振りを続けながら、昴の方を見て微笑む暁斗に笑顔を返した後、ソファに座り込んでそれを眺めていた。
済むまで、待つつもりだった。
まじまじと暁斗を見ていると、いつもなら気にも留めないことが心の中まで入ってくる。
暁斗の剥きだしの上半身には、古傷の痕が残っているのだ。
男の勲章、といえば聞こえはいいだろうが、それはひどく昴の心に食い込んできた。
痛かったんだろうな。
そう思った時、暁斗の動きが止まった。
「お待たせしました」
タオルで汗を拭きながら、こちらへやってくる暁斗の姿に、苦しいほどの想いがせり上がってくる。
昴は腕を伸ばすと、暁斗の傷にそっと触れていた。
「どうなさいました」
「暁斗、痛かった?」
驚いた眼を向けると、昴はこれまで見たことのないような表情をしていた。
眉根を寄せ、心配そうな顔。
切なげな、眼の色。
ともだちにシェアしよう!