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第三章・10
ふと気づくと、自分の方には山のように皮が積み上げられているのに、暁斗はその半分も食べていない。
せっかく彼に食べさせようと思って持ってきたのに。
今さらながら、我慢することの苦手な自分を恥じる思いだった。
ぶどうを食べ終わった頃には日もとっぷりと暮れ、昴はある事に気が付いた。
『明日の夜も、会ってくれるかな』
『申し訳ございません。明日の夜は、用がございます』
そういえば、今夜暁斗には何か用事があるのだった。
でも、戻りたくない。
このままずっと、一緒にいたい。
「暁斗、今夜はやっぱりこれから用がある? 僕は、戻った方がいいのかな」
一緒にいたい、と素直に言えればいいのに。
そっと唇を噛む昴に、意外な言葉が返ってきた。
「いえ、用は無くなりました。今夜は、昴様と共にいたいと思います」
昴は、眼を丸くした。
まるでこちらの考えを読んでいるかのような事を。
嬉しさが込み上げてくるその時に、暁斗はさらに昴を驚かせてきた。
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