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第三章・30

 どちらからともなく抱き合い、キスをした。  甘く優しい暁斗のキスは、思いやりにあふれていて嬉しかった。  そして、初めて暁斗は昴の前で全裸になった。  すべてを、僕にくれるというのだ。  体のあちこちに走る古傷に、昴はキスを落とした。  思えば、始まりはここからだったような。  彼の痛みは、僕の痛み。  そして彼の悦びは、僕の悦びでもあるのだ。  身も心も捧げる覚悟で、昴は体を開いた。  濃厚な前戯を施しながら、暁斗は逸る気持ちを必死で抑えていた。  まだだ。  まだ、早い。  昴の呼吸をはかり、体の震えを感じ取りながら全身を、それこそ足の先までしゃぶった。 「あぁ……」  切なげな、昴の甘い声。  耳に心地よく聞きながら、愛する人を悦ばせる幸福に浸った。  昴の上に被さり、性器どうしをこすりあわせて昂ぶりを上げてゆく。  暁斗の腰の動きに併せるように、昴もぎこちなく腰を振り始めた。

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