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第四章・5
「ね、暁斗。暁斗は、何の花が好き?」
他愛のない、その場つなぎの問いかけのはずだった。
そして、戻ってくる返事は『バラが好きです』に決まっているはずだった。
バラの花は僕の化身。
僕のことが好きな暁斗なら、バラが好きに決まってる。
だが、暁斗の返事は昴を満足させるものではなかった。
「そうですね、ミヤコワスレが好きです」
「ミヤコワスレ?」
聞いたこともない花だ。
しかも、バラではないなんて!
「ちょうど時期も今頃に咲きます。ほら、さっきの花束。あれを紫色にしたような花です」
「……」
どんどん機嫌の悪くなる昴に気付かず、暁斗は尋ねもしない事まで話してくる。
「清楚で、可憐です。大輪の花にも劣らず、美しゅうございますよ。中心の黄色と花びらの紫色の対比が、実に艶めかしく」
「戻る! おやすみ、暁斗!」
「なッ!?」
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