103 / 193
第四章・6
すでに暁斗の部屋へ到着しているのに、自室に戻ろうとする昴の腕を、暁斗は引っ掴んだ。
「今夜は許してくださるのでは?」
「その気じゃなくなった! 放せ!」
「今更それはございません」
「放せ! はーなーせー!」
じたばたともがく昴を仕留めた小鹿のように肩に担いで、暁斗はのしのしと室内へ入った。
手足をばたばたさせて、ぎゃんぎゃん叫ぶ昴は、煩いを通り越して愛らしくさえある。
そのまま寝室へ入ってしまうと、暁斗はベッドの上へ昴を横たえた。
すぐに、上へと被さった。
口でその柔らかな唇を塞ぐと、時間とともに昴はおとなしくなっていった。
耳をかじり、首筋を何度も何度も舐め擦ると、ぶるぶる震えながら小さな声を上げるようになっていった。
「やだ。嫌だ、暁斗。したくない」
「どうしてですか」
体はいい反応を返してくるのに、そむけた顔の瞳には涙が浮いている。
さっきまで、あんなに嬉しそうにはしゃいでいたのに。
ともだちにシェアしよう!