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第五章 私はあなたに惚れるために、生まれてきたのだと思います。
朝一番に会った昴は、不機嫌そうだった。
空はこんなに青いのに。
風はこんなに心地いいのに。
そして、そんな昴に挨拶を避けても、挨拶しても、結局は非難を浴びる事は解かりきっていたので、暁斗はこの不機嫌な主に声をかけた。
「おはようございます」
「おはよ」
なぜか片手を額に当てたまま、無愛想な返事をよこす昴。
まさか頭痛でもするのかと、暁斗は手を伸ばした。
「どうかなさったのですか」
「さわるな!」
乱暴な言葉を使いながらも、逃げる所が怪しい。
頭に瘤でもこしらえたかと、暁斗は腕を伸ばした。
昴が、そんな暁斗の手を払った拍子に、額を押さえていた掌が外れてしまった。
「!」
手が離れた途端、ぴょこんと一房の髪が元気に跳ね上がった。
……アホ毛だ。
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