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第五章・2

 何の事はない、昴は迂闊にも美しいその髪に寝癖を作ってしまい、人に見られまいと必死で抑えていたのだ。  頭痛でも、瘤でもなかった。ひとまず安心だ。  だが昴は、緩んだ暁斗の顔を見て、真っ赤になって怒鳴った。 「笑ったな、暁斗!」  暁斗の胸倉を両手で掴んで、がくがくと揺さぶった後、愛しの主はもう走って走ってその場から消えてしまった。  朝一番に会った昴は、こんな調子だった。

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