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第五章・5

「今日は、皆さんで焼き菓子を作りましたの」  彼女がそう言うと、周りの女どもがさえずり始める。  久保田様はとてもお上手だった、とても初めてとは思えない腕前だった、おいしくってたくさんいただいてしまった、だのだの。 「柏さまも、おひとついかが?」  断る間もなく、久保田は手にした籠から菓子を取り出し、ぐいと差し出してきた。  ここまでされては突き返すわけもいかず、暁斗は少し焦げ臭い菓子を受け取った。 「……」  期待を込めた、久保田のまなざし。  これは、この場ですぐ食べて見せろと言うわけか。  断ると、さらに大騒ぎになる画が頭に浮かんできたので、暁斗は黙って菓子を一口かじった。  甘くて、苦くて、硬くて、不味い。  そんな事を考えながらも、暁斗の顔はまるで表情を見せない。  焦れたのか、久保田は執事の顔を覗き込むような仕草を見せた。

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