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第五章・7
女同士の人間関係。
その恐ろしさ、薄ら寒さを感じつつ、暁斗は一言だけ感想を述べた。
「香ばしいですね」
女たちは、それはもう褒め言葉としか受け止めず、口々に久保田の腕前を称えた。
再びきゃあきゃあと、姦しい事この上ない。
暁斗はもう、これ以上は付き合いきれんと踵を返して元来た道を歩き始めた。
背中から久保田のひときわ甲高い声が呼んでいたが、振り返る気にもなれなかった。
そして、夜。
朝、不機嫌だった昴。
昼、上機嫌だった昴。
果たして、夜の顔はどんなだろうと思いつつ、暁斗は自室の窓辺にソファを出して腰かけていた。
空には、月。
手には、杯。
一人一献傾けながら、昴を待っていた。
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