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第五章・12

 しばらくは抵抗する素振りを見せていた昴だったが、次第に動かなくなり両腕をだらりと降ろしてしまった。  その手を取ると、暁斗は自分の頬に当てた。  熱い。  昴は、今日初めて暁斗の熱を肌で感じた。  こんなにも熱い彼の体を、受け止めた。  藤原家の執事の婚姻は、許されている。むしろ推奨されている。  優秀な血統が未来に続く事を期待され、またその子どもが藤原家に仕える事を期待され、適齢期になると家人が結婚を勧めてくる。  暁斗も例外ではなく、これまで御見合いを持ちかけられたが、その都度『私は御家より他に大切なものは要りませんから』と受け流してきた。  そして、昴もそれを知っていた。  暁斗が縁談を断るのは僕の為だ、と、優越感を抱いていたものだ。

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