132 / 193

第五章・13

「……暁斗」  昴が口を開いたので、暁斗は自分の頬に当てた彼の手を握った。 「僕は、何のために生まれてきたんだろう」  返答を求めているような口調ではなかったので、暁斗は沈黙をもってそれに答えた。 「藤原家の人間として、未来を築くため、だよね」  ぽつり、ぽつりと呟くように話す昴だ。 「家、ってなんだろう。どうして、好きな人と一緒になることも許されないんだろう」  それを思うと、自分はどうして藤原家に生まれてきたのかと呪いたくなる。  どうして僕は、暁斗を好きになっちゃったんだろう。  せめて暁斗の子をこの世に残せたら、愛する人の遺伝子をこの世に残せた、だの、子どもには自分の分まで幸せに生きて欲しい、だのと気が紛れるだろうに。

ともだちにシェアしよう!