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第五章・13
「……暁斗」
昴が口を開いたので、暁斗は自分の頬に当てた彼の手を握った。
「僕は、何のために生まれてきたんだろう」
返答を求めているような口調ではなかったので、暁斗は沈黙をもってそれに答えた。
「藤原家の人間として、未来を築くため、だよね」
ぽつり、ぽつりと呟くように話す昴だ。
「家、ってなんだろう。どうして、好きな人と一緒になることも許されないんだろう」
それを思うと、自分はどうして藤原家に生まれてきたのかと呪いたくなる。
どうして僕は、暁斗を好きになっちゃったんだろう。
せめて暁斗の子をこの世に残せたら、愛する人の遺伝子をこの世に残せた、だの、子どもには自分の分まで幸せに生きて欲しい、だのと気が紛れるだろうに。
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