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第五章・15
俺は。
昴様、あなたに会うために生まれてきたのだ。
「私はあなたに惚れるために、生まれてきたのだと思います」
あまりの暁斗の熱い言葉に、昴の瞳からはとうとう涙が一粒こぼれた。
「どうして? 僕は、暁斗。僕は……」
朝からの自分を、思い返していた。
髪に寝癖がついたくらいで、当り散らした。
ちょっと良い事があったくらいで機嫌を治し、甘えた。
そして、今。
まるでこの世の終わりのように、暗い心地で暁斗に愚痴を吐く。
そんな僕の事を、どうしてこの暁斗という男は好いてくれるのか。
藤原家の執事で最も生真面目と言われる男が、藤原家で一番お天気屋と言われる僕を好いてくれるのか。
だが暁斗は、昴の髪をさらさらと梳きながら優しく微笑んだ。
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