134 / 193

第五章・15

 俺は。  昴様、あなたに会うために生まれてきたのだ。 「私はあなたに惚れるために、生まれてきたのだと思います」  あまりの暁斗の熱い言葉に、昴の瞳からはとうとう涙が一粒こぼれた。 「どうして? 僕は、暁斗。僕は……」  朝からの自分を、思い返していた。  髪に寝癖がついたくらいで、当り散らした。  ちょっと良い事があったくらいで機嫌を治し、甘えた。    そして、今。  まるでこの世の終わりのように、暗い心地で暁斗に愚痴を吐く。  そんな僕の事を、どうしてこの暁斗という男は好いてくれるのか。  藤原家の執事で最も生真面目と言われる男が、藤原家で一番お天気屋と言われる僕を好いてくれるのか。  だが暁斗は、昴の髪をさらさらと梳きながら優しく微笑んだ。

ともだちにシェアしよう!