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第五章・16

「あなたは、月のようです」  そう言って、暁斗は昴を愛でた。 「満ちては欠け、そしてまた満ちる。毎日、いや会うたびにくるくると表情を変える」  そして私は、あなたのそんなところに惹かれたのです、と暁斗は昴を愛でた。  優しく髪を弄られながら、昴は眼を閉じて暁斗の香りを胸いっぱいに吸っていた。  あぁ。確か1年前の今頃に、円い月を見ながら僕は暁斗の事が好きなんだ、と自覚したんだっけ。  今宵は満月。  そう言いながら暁斗は昴からそっと離れると、平たい杯に酒を注いだ。  杯には円い月が揺れながら映っており、昴は酒の香りに軽く酔った心地を感じた。  いや、酔っているのは暁斗のせいだ。  ひどくのぼせているのは、暁斗がやけに甘くて強い言葉をさんざん飲ませてくるからだ。  暁斗は、杯の中の満月を飲んだ。  一口、二口。そして三口。  三度に分けて飲み干した。

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