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第五章・17

 そしてもう一度杯に酒を注ぐと、今度は昴に寄越してきた。 「私のやったように、三回に分けて飲んでください」  月が満ちる時、人は生まれるという。  潮が満ちる時、人は生まれるという。 「あなたの中に、私という人間を宿してほしいのです」  あぁ、本当に今夜の暁斗はどうしちゃったんだろう。  いつもの昴なら混ぜっ返すところだが、今夜は素直にその言葉に酔った。  酔った自分を、さらけ出した。 「三回で飲む事に、何か意味が?」 「婚姻の契りを交わす意味を持ちます」  昴様は、と暁斗は杯を昴に持たせた。  彼の手を取り、酒を飲むよう促した。 「昴様は、私に会うために生まれてきた。それでは、駄目ですか? 私は、昴様に会うために生まれてきたのですが」

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