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第五章・20

 最後に、足の小指にキスをされた。  すっかり裸に剥かれてしまった昴からは、体の強張りも消えていた。  キスをされる間に。  全身を舐め、ついばまれる間に心は熱く昂ぶっている。  暁斗が改めて昴の唇を吸うと、散々焦らされていた主は待っていたように舌を絡ませた。 「あ、暁斗。暁斗……ッ」  キスの合間に、息を継ぐ。  息を継ぐ合間に、名を呼んでくる。  そして、昴の口から、暁斗は初めての言葉を受け取った。  いつもより真摯な、いつもより切ない、いつもより切羽詰まった声色で。 「愛してる。暁斗、僕は暁斗を、愛してる」  報われた、と感じた。  これまでの、どんな事より嬉しかった。  この世に生を受け、様々な辛酸を舐めてきた。  それらが、一気に溶けてゆく。  溶けて消えてゆく。  取るに足りない、悩む必要もないものとして、消えてゆく。  

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