146 / 193

第六章 さぁ、おねだりしてごらんなさい。

 自分の名を呼ぶ声を聞き、昴は物憂げに顔を上げた。 「どうなさいました? 溜息などつかれて」  声を掛けてきたのは、藤原家の執事の一人・古川(ふるかわ)だった。  心配そうに眉根を寄せた彼の心を軽くするため、昴は模範解答を口にした。 「何でもない」  そうはいいましても、と古川は畳み掛けてくる。  おかしい。  大抵の人間は、これで僕を解放してくれるのに。  そっとしておいてくれるのに。

ともだちにシェアしよう!