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第六章・19

 自分の名を呼ぶ声を聞き、昴は意気揚々と顔を上げた。 「さすがは昴様!」  声を掛けてきたのは、古川。  先だって二言三言話した、あの執事だ。 「例の花園は、これからもそのまま維持されるようになりました。あなた様のおかげです」 「いや、僕は何も」  そうやって謙遜なさるところが素晴らしい、と古川はとにかく褒めてくれる。 「しかし一体どうやって、あの旦那様を説得なさったのです?」 「それはね……」  昴は、図書館で調べた文献について語った。  かなり昔のものになるが、そこにはくだんの花園は祖先の御霊に奉じるために造られた、とあったのだ。  祖先に供える花々を育てるための花園だ。おいそれと潰してよいものではない、と昴は資料と共に父親へ意見した。  まだまだ子ども、と思っていた昴が、堂々と父親に意見したのだ。  家長は昴を見直し、花園はそのまま据え置き、という事となった。

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