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第六章・20
「なんとも血気盛んなことで。昴様、何か奮い立つような出来事でも?」
「え? いや、別に」
武勇伝の割には、何とも歯切れの悪い返事だ。
古川は怪訝に感じたが、これから人に会うのだ、という昴にうやうやしく一礼すると去って行った。
「当てて見せましょうか」
「暁斗!?」
いつのまにやら、待ち合わせの男がここにいる。
暁斗は眼を細めると、昴の唇に指先で触れた。
「私と寝て、精が付いて。ですから力も付いたのでしょう?」
「ち、違う! 下品な事を言うな!」
違うと言いつつ、当たらずとも遠からず、な昴だ。
久々に暁斗の顔が見られて、元気になった事には変わりはないのだ。
「私は素直な昴様が好きです、と申し上げたはずですが」
「……ッ!」
昨夜の情事を思い出し、昴は赤くなった。
そう、暁斗は確かにそんな事を言っていた。
そして僕は……。
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