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第七章・2
それ以上言っても無駄だと悟った暁斗は、昴を黙って抱き寄せた。
「暁斗?」
「一ヶ月以上昴様と会えずに淋しい思いをするのは、私も同じです」
「え……」
「ですが、旦那様からの御命令です。嫌でも行かねばなりません」
「うん……」
「お土産をたくさん買ってきますから、待っていてください」
「解かった」
淋しい、と。
あの口下手な暁斗が、僕と会えないのは淋しいと言った!
昴はその一点で、えらくご機嫌になった。
お土産は絹のネクタイがいい、などと言い出す始末だ。
「暁斗も浮気しないでよね!」
「それは大丈夫です」
そして大きなキャリーバッグは、昴の部屋に運び込まれ、寝室の隅に転がる事となった。
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