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第七章・14
返事をせずに、暁斗に抱きついた昴だ。
もしや、これも夢!?
いや、夢でもいい。こうして暁斗に触れられるのなら。
幸い暁斗は夢でも嘘でもなく、本物らしく世話を焼いてきた。
「とにかく、何か羽織ってください」
寝室から引きずり出した毛布に身を包み、暁斗の温めてくれたワインを飲んで、昴はようやく人心地着いた。
「でも、どうして? 暁斗、研修サボって帰って来たの?」
「そんな馬鹿な」
聞けば、研修で詰めていたホテルで食中毒が出たらしい。
幸い暁斗は無事だったが、研修生はもちろん講師の面々も被害に遇い、入院した人もいるという。
「研修は中止になり、早めに戻って来た、というわけです」
「大変だったね」
「ええ、疲れました」
疲れた、という暁斗だったが、妙な部分は元気を取り戻していた。
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