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* 正臣side

「伯爵、御令息は確か三人ですよね?」 「ええ。それが何か?」 「いえ、ただ、少し気になって。」 *** ______先ほどの彼は一体誰だろうか? 伯爵邸からの帰り道に馬車に揺られながら、正臣は考えていた。 よくよく考えてみたら、あんな草臥(くたび)れた服を着ている時点で、伯爵の息子でないことは自明だった。 差し詰め住み込みの使用人の子供だろう。 不自由な足を引きずりながら杖をついて歩く少年。 明らかに異国の血が混ざった美しい顔立ち。 動くと揺れる短い亜麻色の髪と見え隠れする白くて細い(うなじ)。 「……、別に俺の気にする事でもないか。」 まるで少年の姿を頭から搔き消すように、そう心の中で呟いて、彼は家路についた。

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