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朝、目覚めると体がだるい。
熱もあるようだ。
昨日は痛みのせいで半ば気を失うように寝てしまったので、布団もかけずに一晩明かしたからであろう。
病弱なこの体はほんの些細なことで故障するのだ。
ずるずると重い体を引き摺りながら古びた部屋の扉を開けると、冷めきった朝食が置かれていた。
基本食事は朝晩扉の前に置かれる。
使用人と必要以上に接触するのは禁じられているからだ。
他にも、部屋を出るのは風呂に入る時と、週に1度貸本屋に行く時以外は禁止だ。
何故貸本屋に行く事が許されたかと言うと、家の手伝いを少ししているからである。
足が不自由なせいで普通の仕事は出来ないし、そもそも客人や近所の人間に姿を見られない為にも僕は使用人の仕事はさせられていない。
良いのか悪いのかは微妙なところだけれども。
代わりに家の事業での取引に使うフランス語の文章を和訳しているのだ。
継母は絶対に許さないだろうから、何とかして父に頼み込んだのだ。
洋書を借りると言えば、少しは仕事に役立つということで許して貰えた。
ただ、それを継母と光治は納得していない。
朝食は、体調のせいか箸も進まず、殆ど残してしまった。
お盆と食器を扉の前に置いて、僕は布団に潜り込んで横になった。
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登場人物設定などを随時編集、更新しておりますので、良ければご確認下さい!
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